ヤクルト西浦直亨内野手(28)の“神走塁”が、勝利を呼び込んだ。

1-1で迎えた5回1死二、三塁で、打席には太田。中日の先発柳の5球目を高いバウンドの遊ゴロとした。三塁走者の西浦は、遊撃手京田が捕球したタイミングで、既に本塁まで半分以上進んでいた。滑り込みながら、ベースに伸ばすと見せかけた左手を先にグラウンドについて支えにしつつ、うつぶせになって回り込む形で右手を目いっぱい伸ばした。タイミングは憤死だったが、中日の捕手加藤のグラブをかいくぐり生還。「捕手の動きを見て、右手で行くか左手で行くかを決めた。キャンプで練習してきたこと」と振り返った。

どうしても1点がほしい場面で「ゴロゴー」のサインだった。小川監督は「西浦の遊ゴロでの走塁が大きい。大きいプレーだった」と称賛した。浦添キャンプで、白いユニホームのズボンが泥だらけになるまでスライディングの練習をした成果。ベテラン選手も例外でなく走塁練習に参加し、捕手役をコーチが務めてタッチの避け方を指導した。河田外野守備走塁コーチは「(内野守備走塁担当の)土橋コーチが『できるまでやりましょう』と言ってやってきて、やっと(試合で)出た。西浦は本当に頑張ってくれた。左手だとアウトになっていた。本当に褒めてあげたい」と目尻を下げた。

さらに1死一、三塁で、続く上田はスクイズ。三塁走者中村が生還した。走塁と小技で得た2点が、大量得点への流れを作った。主砲バレンティンを負傷で欠く中で、この日は本塁打はゼロながら二塁打2本を含む10安打で8点を奪った。大砲の離脱を別の形でカバー。指揮官も「そういう(チームの)意識があると思う」と評価する。2連勝で、首位巨人と0・5差に縮まった。燕打線は、とことん取り組んだキャンプで身に付けたことを武器に、バレンティン不在のピンチをチャンスに変えている。【保坂恭子】