日刊スポーツの評論家陣が提言する今回の「野球塾」の特別版は、山田久志氏(70=オリックスOB会長)の登場です。阪急のエースとして通算284勝をマークしたレジェンドが、プロ野球界の最近の派手なパフォーマンスについて語りました。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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ペナントレースは今のところ、どのチームも決め手を欠いている。セ・パ両リーグの戦況を見ていると、どこからも抜け出すような気配は伝わってこない。でもここからは、夏場にかけて打力を上げてくるチームが優位に立つとみている。

そこでちょっと気になっているのは、プロ野球のアマチュア化ともいえる現象だ。ピッチャーが三振を奪ったぐらいで全員がベンチ前で出迎え、バントを決めたらハイタッチって…。いつからこんな野球になったんだろうか。

これが高校野球ならわかるよ。1つ負ければ敗退で、この1球、この一打にかける一発勝負だから。そこは許してもいいだろう。プロだって、ここ一番って時のガッツポーズはある。でも、1本ヒット打ったぐらいで、そんなにはしゃがなくてもいいんじゃないのかな。

わたしの現役時代にはあり得なかった光景だ。相手チームから反感をかっただろうし、メジャーリーグでは狙われかねない。記憶では、外国人で最初に派手なガッツポーズをしたのは巨人でプレーしたクロマティだったような気がする。

プロ野球は「技」をみせる世界だと思っている。なにもオーバーアクションをみせる世界じゃない。真剣勝負のなかでハイレベルな技術を披露し、ファンから拍手をいただく。技と技の競い合いをみせるのがプロフェッショナルだろう。

かつてはホームのスタンドからも厳しいヤジが飛んだ時代だった。ベンチに向かってガッツポーズをすることでファンと一緒に盛り上がるというなら、それも時代かもしれない。でも何でもかんでもの過剰な姿には、首をかしげてしまうわけさ。

もう1度断っておくが、劇的なゲームでなら派手なパフォーマンスもありだろうが、やり過ぎはよくないよ。野球道とかなんとかをかざすつもりもない。でもプロには、プロの所作がある。同じ土俵でぶつかっている相手に敬意を払うことだけは、どこかで忘れないでいてほしい。