西武がブルペンデーを、完封リレーで飾った。

先発予定だった今井が発熱で登板回避する緊急事態で、代役登板した佐野泰雄投手(26)が、4回1安打無失点の快投を見せた。3回までパーフェクトで10人連続凡打に打ち取る内容。さらに後続のマーティンも3回無失点に抑え4人の継投で、盟主・巨人を開幕戦以来の無得点に抑え、苦境を乗り越えた。

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約束の40球を超えても、冷静さは失わなかった。佐野は4回1死一、二塁の場面で4番岡本の打席を迎えた。「巨人は真っすぐ狙いできているところがあった」。初球、低めのチェンジアップ。遊ゴロで併殺打に打ち取った。早打ちの傾向が強かった巨人打線に要した球数は4回42球だけ。40球をメドに交代のプランは変わらず、1安打無失点の完璧に近い内容で後続にバトンを渡した。

登板前日の10日午前10時ごろ、携帯電話の着信履歴に小野投手コーチの名前がいくつも並んでいた。愛娘と2人で過ごしていた休日、緊張感が走る。急いで掛け直すと「明日、先発で頼む」と託された。電話を切ると、すぐさま先発予定だった今井にコール。「どうしたんだと聞いたら、熱が出ちゃいましたと申し訳なさそうにしていました」。後輩の思いをくんで上がったマウンド。申し分ない内容で答えた。

苦い記憶をぬぐい去るには十分だった。昨季5月11日ロッテ戦で2回途中7失点で炎上。1年1カ月ぶりの先発マウンドだったが、気持ちは中継ぎ1番手。「やることは変わらない。中継ぎとしてしっかり投げることだけを考えてマウンドに上がった」。前日、中継ぎ陣は休日。先発だからと気を張らず、いつも通り過ごして迎えたマウンド。1イニングずつ刻み、先頭から10人連続凡打に打ち取った。

4回でマウンドを降りた佐野に、ルール上勝利投手の権利はない。でも、前日は今井に怒気をあらわにしていた小野投手コーチも「素晴らしいのひと言」と称賛。佐野は「緊張しました。正直余裕はなかったです。いろんな場面で投げている中で、チームが勝てたら一番うれしい」。勝ち星はつかなくても、勝利の立役者は、誰よりもふさわしいスポットライトを浴びた。【栗田成芳】