エースは簡単には倒れない。巨人菅野智之投手(29)が7回を107球6安打3失点でリーグトップタイの7勝目を挙げた。

初回に日本ハム打線に5安打を浴び、3失点と捕まったが、2回以降は1安打のみ。捕手の炭谷と組み立てを話し合い、フォークを有効に活用した。打線の援護もあり、これで腰の違和感から復帰後、自身2連勝。状態が万全ではない中でも大黒柱としての役割をしっかりと果たした。

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ベンチへ戻る前に伝えたかった。初回、菅野は3アウトを取るとすぐに捕手炭谷と言葉を交わした。「カーブとフォークは捉えられてなかった。続け球も打たれてないような気がした」。日本ハム打線に先頭から4連打を含む5安打と捕まった。速球、カットボール、スライダーと得意球を捉えられたが、頭の中には解決策が浮かんでいた。

2回以降はイメージを体現した。直球の最速は147キロ。高めに浮く場面が多いとみると左打者の外角へ微妙に逃げるツーシームを多投。130キロ台中盤のフォークを決め球だけでなくカウント球にも応用した。前回9日ロッテ戦で98球中7球(7・1%)だった落ち球が、この日は107球中19球(17・8%)。約2・5倍も多投し惑わせた。

オープン戦と合わせて4度目のコンビ。マスクをかぶる炭谷も菅野のポテンシャルを最大に引き出そうと思考を巡らせた。「智之はスライダーのイメージが強い。だからこそカーブとフォークを生かさないと。(小林)誠司と同じリードでは僕を使ってもらっている意味がないので」。菅野も思いに応えるように、バッテリーを組んだここ2戦で首を振ったのは1度だけ。効果てきめんのフォークに「新しい引き出しの中にしまっておきたい」と光を見いだした。

もちろん本調子ではないことを自覚している。「まだ内容も体も完璧じゃない。立ち上がりは永遠のテーマ。でもその日その日、ベストを尽くそうとマウンドに上がっている」と、培った技術、経験をフル回転させ、チームを交流戦開幕から4カード連続勝ち越しへ導いた。次回も中6日で交流戦最終戦となる23日ソフトバンク戦(東京ドーム)に臨む。「交流戦を優勝して、何とかリーグも優勝したい」。エースの復調に比例して、チームも上昇気流に乗っていく。【桑原幹久】

▼巨人菅野がハーラートップに並ぶ7勝目。札幌ドームではプロ初勝利となった。今季、菅野が白星を挙げた試合の失点は2点→1点→3点→1点→5点→2点→3点。 3失点以上の白星は15~17年が1試合もなく、昨年も5月18日DeNA戦の1試合しかなかったが、今季はもう3試合目。防御率4点台で本調子にはない菅野だが、今季は打線の援護もあり、15勝で最多勝を獲得した昨年より1試合遅いだけのチーム63試合目に7勝目を挙げた。