日刊スポーツ評論家陣が語る「野球塾」は後半戦に向けた特別編で、85年阪神日本一監督・吉田義男氏(本紙客員評論家)が登場。百戦錬磨のレジェンドが逆転Vのポイントに挙げたのは、新たな先発ローテーション確立。ここから厳しい戦線をいかに勝ち抜くかに、矢野監督1年目の評価がかかっていると指摘した。【取材・構成=寺尾博和編集委員】

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まずは“出足”でしょうな。阪神にとって中日は直接対決で4勝7敗と負け越している相手だが、ここでもたつくわけにはいきません。

先日、ノーベル医学生理学賞を受賞した京都大特別教授の本庶佑(ほんじょ・たすく)さんと久しぶりにお会いし、野球談議に花を咲かせました。

京都出身の先生が大の阪神ファンなのは、京都人としても誇らしい。「世界のホンジョ」とは「打てませんなぁ」と意見を交わした次第です。

その打つ方は「4番」ですな。現状では大山だが、新外国人ソラーテが加わると分かっていて、大山を固定すべきとは言えない。ここは比較になる。

阪神は「抑え」がそろっている強みを生かしたい。6回までにリードすれば勝てるなんてチームは他にはない。そこは先発がカギを握ります。

開幕からメッセンジャー中心に組んだ先発ローテーションだった。西、ガルシアら補強組を含めて勝ちが先行する先発が岩田(3勝2敗)1人とは寂しい。

後半戦は高橋遥ら若手を入れながら、これまでと違ったパターンを確立し、戦っていく必要があります。

つくづく思うのは、前半戦最終の巨人に3連敗は本当に痛かったですわ。特に初戦は勝っておきたかったし、原監督の執念を見せつけられた。

あれが逆なら今ごろ首位巨人に3・5ゲーム差。しかし、まだ巨人との直接対決は残っているから、口には出さなくても「打倒巨人」は絶対条件です。

岡田監督だった08年は13ゲームをつけた巨人に逆転Vをさらわれました。今年はここから巻き返し、それを逆に引っ繰り返したらいい。

ちょっと気になっているのは、大山、糸原らの守備位置を途中変更することで、内野の守備はそんなに甘くはない。

内野手の立場から言うと、そのポジションには、そのポジションで技術の深さがある。失策数の多さを解消するためにも専門職に徹するべきだ。

これからのるかそるかの戦いに、真の“矢野色”が表れる。ここからの勝ち負けが、1年目矢野監督の評価になる。