広島鈴木誠也外野手(24)が延長10回、劇的なサヨナラ打で、首位巨人3連戦3連勝をもぎ取った。

1死満塁から巨人マシソンの内角直球を、詰まりながら右前へ。1カ月半ぶりの3連勝で首位とのゲーム差を9に縮め、単独3位に浮上させた。依然として自力優勝消滅の危機にあるが、3夜連続で回避し、巻き返しへのきっかけをつかんだ。

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目の前で、バティスタが歩かされた。1-1の延長10回1死満塁。鈴木は打席に向かいながら、静かに頭を整理した。「何を打とうかな…」。外野手が後ろに下がっているのが見えた。カウント1-1からの3球目、149キロのインローに食らいついた。「ギャン詰まり」と振り返るサヨナラの打球が右前に弾む。ベンチから仲間が飛び出してきた。一塁ベースを回り、表情を緩めた。

「何とか落ちてくれと思っていた。こうやって最高の場面で、首位の巨人相手にこういうゲームができてよかった」。

今季2本目のサヨナラ打は、4番の自覚に背中を押された。1発を狙うのはオールスター限定。存分にフルスイングを楽しみ、本塁打競争で優勝した。第2戦では特大のアーチを甲子園の左中間スタンドにたたき込んだ。だがシーズンでは、ガラリと心構えを変える。勝利だけを目指し、泥臭く安打を狙った。「去年から変えているつもりはない」と、信念を貫いた。

3連勝は5月28日~6月1日の5連勝以来、1カ月半ぶり。何より、首位巨人に3連勝して再浮上のきっかけをつかんだことが大きい。ゲーム差は9と大きく水をあけられているが、戦える状態に整ってきた。「ゲーム差はあるけど、しっかりと自分たちの試合をして、諦めずに上を目指す。僕たちの上には何チームもある。巨人だけじゃなく全チームを意識する」。厳しい状況の中、鈴木はがむしゃらに目の前の一戦に向かう。【村野森】

▽広島緒方監督(鈴木のサヨナラ打に)「さすがカープの4番。全員が勝利につながる一打を信じていた。期待に応えられる誠也はすごい。今年はああいう(食らいつく)打撃が多い」