涙の実戦復帰だ。左膝裏の肉離れで離脱していたソフトバンク柳田悠岐外野手(30)が8日、ウエスタン・リーグの広島戦(タマホームスタジアム筑後)で約4カ月ぶりに実戦復帰した。4番指名打者で2打席出場し、死球、空振り三振だった。試合後にはリハビリ中の苦しい思いがこみ上げて涙。3年連続日本一に貢献するために、2軍で実戦を重ねて1軍復帰を目指す。

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目頭が熱くなり、涙がこぼれ落ちた。予定の2打席を終えた柳田は「治るかどうか分からない不安がありました。4カ月間を思い出した。よう打席に立てたなと思います」と赤く腫らした目を、タオルでぬぐった。野球ができない悔しさ、なかなか痛みが引かない左膝への不安などを乗り越えた思いが、涙となった。

この日一番の大歓声で迎えられた2回の第1打席は、広島ケムナの初球スライダーに空振り。その後も2本ファウルと積極的に振っていった。そして6球目は、148キロ直球が右臀部(でんぶ)を直撃する死球。「いてっ!」と大声を上げたが、すぐ一塁へ。スライディングはまだできないが、二進、三進後に美間の右翼線二塁打で生還。しっかりした足取りでダイヤモンドを1周した。3回1死一、二塁では3球スイングし空振り三振に倒れた

軸足の左膝の故障。まだフルスイングとはいかないが「スイング自体は普通にできている。そこから投手に合わせるということ。野球ができるようになっているのでよかった」と心底喜んだ。4月7日のロッテ戦の走塁中に負傷。最初は「ちょい痛」と話し、全治3週間と診断されていたが、損傷の状態が悪く、長期化した。走ることも打つこともできず、黙々と体幹トレーニングに励んだ結果、上半身が大きくなり、下半身は細くなった。「オーダーしたスーツ4着がダメになりました」と笑い話をしていたが、ファーム施設の筑後へ朝早く通い、夜も早く寝る。食事時間も規則正しい生活が4カ月も続いた。

斉藤リハビリコーチは「7日に病院に行き、修復している、大きな問題はないと言われた」と説明した。千葉で報告を受けた工藤監督は「出たことが何より。やっと前に踏み出すことができてよかった」と喜んだ。今後は守備も含め、2軍で実戦を重ねる。涙の2時間後、柳田は「やってもうた」と連呼して照れ笑い。いつものギータに戻っていた。1軍復帰への道が見えてきた。【石橋隆雄】

◆柳田の苦闘 開幕9試合目の4月7日ロッテ戦で負傷した。7回1死二塁。二塁走者の柳田が三盗を決めた際に左膝を痛めて交代。「左半膜様筋腱(けん)損傷」で、当初は全治約3週間と診断された。だが、その後、症状が重いことが判明。6月15日にフリー打撃を再開したが、走ることに不安があり、実戦復帰は8月のこの日にズレ込んだ。