昨季新人王がマジック点灯を阻止した。DeNA東克樹投手(23)が23日、巨人戦で8回1失点の好投で4勝目。敗れれば巨人に優勝マジックがともる大一番で、チームを優勝争いに踏みとどまらせた。東京ドームでは5戦4勝と無敗を継続。ホスト界の帝王ローランドの著書から得た金言を胸に、復活を遂げた巨人キラーがわずか88球で蹴散らした。

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マウンドには2種類の男しかいない。東か、東以外か。帝王の言葉を体現するように、譲るつもりはなかった。負ければ巨人にマジック点灯。投げ合う相手は立命大の先輩桜井。整いまくった舞台で「ずっとワクワク、楽しみにしてました」と気合は一層入った。

「成功したいなら、やるか、やるか」。右も左も関係ない。チェンジアップで4回には亀井、坂本勇を連続で空振り三振、7回まで先頭打者は1人も許さなかった。8回に連打で1点を失うも、増田大、小林を宝刀でバッサリ。「去年に近い。腕を振って投げられた」と緩急差で酔わせた。

強気なブランディングで巨人打線をメロメロにした。昨季から東京ドームでは無敗。5戦4勝、防御率1・60と無類の強さを誇る。「やっぱり東が苦手だというイメージがつけば、有利になる。イメージを植え付けるにはすごく良かった」と直球とチェンジアップの組み合わせは変えず。5月6日、横浜スタジアムで3回8失点で初黒星を喫したが「リベンジをしたかった」と心を燃やしていた。

5月の神宮、室内練習場からクラブハウスへ歩いていると、ヤクルトファンの少年から「これ読んでみて」と本を手渡された。『俺か、俺以外か。ローランドという生き方』。ホストの帝王と呼ばれるローランドの著書だった。「敵チームのファンだけど、励まそうとしてくれたのかな」。

昨季の新人王も、今季は左肘違和感で開幕から出遅れ、復帰後も左手マメの影響で戦列を離れた。もどかしさが募った時、帝王の言葉が刺さった。「女の嫉妬と、男のねたみが俺のアクセサリー」。ネガティブな感情も勲章になる。うらやまれるほどの結果を残すことが、存在価値。東か、東以外か。復活するには、自分以外いない。「前向きになれました。あの子には感謝しないとですね」。目に光りが戻った気がした。

もう、下を向くのはスパイクを履く時だけでいい。「優勝のチャンスは全然ある。1戦必勝で頑張っていきたい」。「ローランド東」が優勝争いの火を消させない。【島根純】