<巨人12-4広島>◇29日◇東京ドーム

逆転優勝を狙う広島にとって、絶対に負けられない巨人戦だった。今カード1勝1敗で迎えた3戦目の先発はエースの大瀬良大地投手。

一方、巨人の先発は桜井だっただけに「落とせない」という思いは強かっただろう。しかし、頼みのエースは巨人打線に木っ端みじんに打ち崩された。

これが大一番の重圧なのだろう。1点をリードした2回1死一、二塁、打席に大城を迎え、フルカウントになった。捕手の会沢は内角に大瀬良の一番の武器・カットボールを要求。しかし左打者の内角に投げきれず、右翼線を破る逆転の2点二塁適時打になった。

制球力のいい大瀬良が内角へ投げきれなかった理由はいくつも考えられる。まず1死一、二塁という状況。厳しく攻めすぎれば死球になるし、ボールゾーンで見逃されれば四球で1死満塁。犠飛や併殺崩れでも同点になる。さらにこのイニングで1死から大城と同じ左打者の阿部に死球を与えている。今季、与えた死球は1個だけ。的確な表現ではないかもしれないが「当て慣れていない投手」とも言い換えられる。少なくとも「ぶつけても仕方ない」と割り切り、厳しく内角を突くタイプではない。

内角に要求した捕手の会沢の気持ちも理解できる。大城の前の打者だったゲレーロには外角一辺倒の攻めで四球。そして大城へのフルカウントになるまでの攻めも外角一辺倒だった。本来なら投手有利のカウントにして内角球を1球でも見せておけばよかったが、ゲレーロにも大城にも3球目までがすべてボール。内角を突く余裕がなかった。苦し紛れに内角を突くなら、大瀬良が得意にしているカットボールという選択になったのだろう。

大一番になればなるほど、投手と捕手の考えに食い違いが出る。それが敗戦への悪い流れを作った。CSでも戦う可能性が高い東京ドームで、広島は嫌な敗戦を喫した。【小島信行】