初の2ケタ勝利に王手をかけた。楽天辛島航投手(28)が12球団最強の西武打線相手に5回3安打2失点と粘り、自己最多を更新するチームトップ9勝目を挙げた。8月は救援に回り、前回登板で先発に復帰してから2戦2勝。チームの連敗を4で止め、1日で勝率5割復帰に導いた。

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「『イメージしていない場面だから無理です』なんて言えないでしょ? 仕事って、そういうものでしょ? 言われた場面で投げる。シンプルなことですよ」

淡々とした口ぶりにのぞく芯の強さ。辛島は辛島だった。8月からリリーフに配置転換となり、あらゆる状況で投げた。ショートスターターの後を受ける「第2先発」、左殺しのワンポイント、6点リードを許した終盤に3イニングを投げて締めくくった試合も。チームのために腕を振った。慣れない救援登板が続いたころ、顔に吹き出物ができたことがあった。周囲から「ストレス?」と心配されても、約1カ月間、10連戦もあった苦しい夏場に仕事を全う。堂々と先発マウンドに帰ってきた。

苦しい滑り出しにもグッとこらえた。初回に2球で1死三塁をつくられ、3番森の二塁打で先制点を献上。2回も先頭山川に初球のカーブを果てしなく飛ばされた。3、4回も先頭を出して得点圏に走者を背負ったが、追加点を許さず逆転を呼び込んだ。「先頭を出しながら粘って、何とか試合をつくることはできた。先発として、もう少しイニングを投げないと」。手応えと反省が入り交じった。

決勝打を含む3打点の島内が「ピッチャー陣で僕のバッティングを称賛してくれるのは辛島くらい。気持ちよく打たせてもらっているので、辛島を援護できて良かった」と笑えば、9回に1点を失いながら満塁のピンチを切り抜けて33セーブ目の松井も「辛島さんに勝ちをつけたい気持ちだった」。スクラムを組んで2位西武を押し切った。プロ11年目。仲間を助け、仲間に助けられ、次回は未知の2ケタ10勝目に挑戦する。【亀山泰宏】