神様、仏様、平井様-。西武平井克典投手(27)が、楽天戦の8回に登板し、今季の登板試合数が72まで伸びた。右打ち強打者のブラッシュ、浅村を任され無失点に封じ、1点差勝ちに貢献。1961年(昭36)に「鉄腕」稲尾和久が記録したパ・リーグ記録の78試合超えも視界に捉えた。迫力満点の山賊打線に隠れがちだが、ブルペンにもこんなタフマンが控え首位ソフトバンクを猛追する。

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ピンチこそ真骨頂だ。8回2死、平井が前打席で2ランを放っていた4番ブラッシュとにらみあった。5球目を詰まらせたが内野安打に。1発を浴びれば逆転の場面で、昨季までの同僚、浅村を迎えた。

サイドハンドから散らして誘った。フルカウントからの6球目。低めにスライダーを落とし、右飛に仕留めた。大きくうなずいてベンチに戻りハイタッチ。勝負の分水嶺(れい)となる、ずっしり重たい1アウトを奪った。「この時期、疲れていない選手はいない。野手のみなさんが点を取ってくれるので、疲れている姿は見せちゃいけない。気合ですね。毎日が」と言った。

キレのいいスライダーと肝っ玉を武器に、1年目に42試合、昨季は64試合に登板した。今季は目標の「70試合」をクリアし、なお数字を伸ばす。「ちゃんとやるべきことをやれば、数字はついてくる」。129戦目での72試合登板は、シーズン換算で79試合ペース。「鉄腕」稲尾超えも現実味を帯びる。

強力な山賊打線を陰で支えている。開幕当初から、ゲーム展開にかかわらずマウンドに駆ける。走者を背負う回の途中、イニングまたぎも元気よくこなして信用を積み上げ、勝ち試合の8回を任されるセットアッパーに。球宴にも監督推薦で初出場を果たした。球団の顔として、西武線沿線などに掲出される8月の日程ポスターにも抜てきされ、キャッチコピーは「快刀乱麻のジョーカー」。社会人1年目に「このままじゃクビになるぞ」と言われ、意を決して転向したサイドハンドが、胸がすく成り上がりを体現している。

優勝争いの中でフル回転が続く27歳。「意気に感じてやりたいですし、すごく充実しています」。11日から本拠地で首位ソフトバンクとの直接対決。偉大すぎる鉄腕に迫るたび、チームがリーグ2連覇へと近づく。【鈴木正章】

▽西武辻監督(ピンチを脱した平井に)「プレッシャーのかかるところで、よく抑えてくれた」

◆平井克典(ひらい・かつのり)1991年(平3)12月20日生まれ、愛知県一宮市出身。飛龍-愛知産大-ホンダ鈴鹿を経て16年ドラフト5位で西武入団。1年目から42試合に登板。18年はチーム最多の64試合に登板し、リーグ優勝に貢献した。今季推定年俸3500万円。180センチ、84キロ。右投げ右打ち。

◆神様、仏様、稲尾様 58年の日本シリーズは、巨人が西鉄に3連勝。西鉄は第4戦から三原監督が全試合でエース稲尾を投入。稲尾が4勝を1人で挙げて逆転優勝し「神様、仏様、稲尾様」と称された。同年のリーグ戦では72試合で373回を投げ、33勝(10敗)を挙げた。