ミスターに並んだ! 猛打賞で決めた! 阪神近本光司外野手(24)がヤクルト戦で3安打し、58年長嶋茂雄のセ・リーグ新人最多153安打に並んだ。リーグ単独トップとなる34盗塁目にも成功し、チームの勝利に貢献した。19日の同カードで、一気にミスター超えだ。

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自慢の快足でミスターに並んだ。8回2死。近本が一塁にゴロを放つ。素早い足の回転で突き進むと、虎のドラフト1位の足が勝った。ベースを踏みしめ、判定はセーフ。甲子園が沸きに沸いた。長嶋茂雄に並ぶセ・リーグ新人最多記録の153安打目。「(記録は)全然。自分でも思ってもないようなことが起こっている」。甲子園で虎党に快挙達成を誓い、いきなり3安打猛打賞でタイ記録とした。

ストイックな姿勢でセ・リーグの頂点にたどり着いた。打席に向かう際、バットを背にまわして肩甲骨をグイッと伸ばす。屈伸し、数秒間で頭の中を整理する変わらぬルーティンがある。7回には中前打で出塁すると、リーグ単独トップに躍り出る34盗塁目に成功。同点のホームを踏んだ。試合中はバットやグラブだけでなく「ペンとノート」も持参する。一本足に近い打撃フォームは「不変」だが、プロに入って「配球」を覚えた。予習と復習を欠かさないからヒットの確率も上がる。

中学時代のチームメートから社会人、そして同期入団の木浪も「ストイック」と評する。近本はこう答えた。「ストイック…ですか? 自分のレベルを高めるために、スキルアップを目指すのは当然。目標や、やりたいことがどんどん出てくるタイプ。途中で違うことに目が行ったら、もし途中でもそれを消して、新しいことに向かっていく。そのとき自分が1番やりたいと思ったことに全力を注ぎたいんです」。室内での打ち込みや、ベンチでのメモ。本人は好きな野球に熱中しているだけだが、その様子に周囲は驚く。

ドラフト指名時から「新人王と盗塁王」の獲得を公言し、その目標も射程圏内にある。球宴ではサイクル安打も達成した。そしてミスター超えは確実。ファンは近本に大きな夢を見る。「たくさんの方が(自分の)タオルだったり、ユニホームだったりプラカードを掲げてもらっている。これだけ応援してくれているのは、本当にありがたい」。この男に奇跡の逆転CSを託したい。【真柴健】

▽阪神浜中打撃コーチ(近本の記録に)「半世紀、長嶋さん以来ですごい記録。明日、(並んだ記録を)抜けるように」