<DeNA2-3巨人>◇21日◇横浜

3度目の監督に復帰した原監督がV逸の球団ワースト記録を阻止した。8度目のリーグ優勝。今更“戦術手腕”を説明するまでもないだろう。

今回、見逃せないのは全権監督として任された“戦略手腕”だろう。

復帰を打診された後、水面下でオフの補強戦略が進んだ。当初、球団から推奨されたFA補強の優先順位は、丸、浅村、西。どの選手も高額な条件が必要で、獲得できるのは2選手まで。「このチームには左のパワーヒッターがいない。何としてもとらないといけないのは、丸」と絞り込んだ。

絞った理由はいくつもあった。当初、丸は広島残留が本線という情報だった。来年、優勝争いの最大のライバルは、3連覇中の広島になると見越した上で「浅村も西もウチで戦力になる。でも姑息(こそく)な考えかもしれないけど、丸がとれれば広島の戦力をそぐことにもつながる。パの2人に比べれば、この差は大きい。丸だけは、何としても」と浅村と西に見向きもせず、方向性を固めた。「練習熱心だし、怠慢プレーもしない。長い契約をしてもいい。若い選手のお手本になる」。プレースタイルや性格面も調査した上での戦略だった。

FA補強のもう1枠は、炭谷だった。「このままの小林じゃ、チームにとっても彼にとってもよくない。競い合って底上げできれば投手陣にもプラスになる。炭谷は経験もあるし、小林とは違った持ち味がある」。投手をリードする捕手だけに、弱点だった中継ぎ陣を補う狙いがあった。

ペナントを見据えた眼力。「広島は丸がいなくなってもバティスタがいる。層は薄くなっても、バティスタを使えば、それほどのマイナスにはならない」と読んだ。前半戦はもたついた広島だが、バティスタをスタメン起用してから快進撃。そのバティスタは薬物問題で出場停止になったが、ライバルの戦略まで的確に見通していた。

フロントも原監督を支えた。好調だった前半戦中に「クックは計算できない。新しいストッパーを探してほしい」と要望。素早くデラロサを獲得し「助かった。彼がいなかったら今ごろボロボロだったよ」と苦笑いしながら感謝した。優勝するために必要な戦力を見極め、確実な補強を遂行させた。巨人にとって何よりの補強は、原監督の復帰だった。【小島信行】