阪神が来季、15年ぶりの優勝を果たすための克服課題を日刊スポーツ評論家陣が「猛虎再建論」と題し、リレー形式で提言します。第4回は元阪神監督の真弓明信氏(66)です。4番で結果を残せなかった大山ら若手野手伸び悩みの課題は今年も解消できず。成長するためにどうすべきかを提言しました。

   ◇   ◇   ◇

若手野手の伸び悩みは一向に解消されていない。今年に限ったことではなく、最近の大きな課題だ。高山、大山、中谷、北條。こういった選手が力をつけたと思っても、長続きしない。逆に悪くなることもある。近本、木浪はいい選手だが、プロに入ったばかりで何も教えていない選手だ。今までいる選手は何をしていたのか、と思われる。プロ野球に入れば、良くならないといけない。ルーキーが1、2番を組んで、チームをリードしているのは恥ずかしい。

昨年、最下位に終わり、キャンプを迎えた時点でほとんどの選手がどこかを変えてみようと考えていたと思う。その姿勢が間違っているとは言わないが、本当に正しい方向で行ったのか、疑問はある。名前を出して悪いが、今岡(ロッテ2軍監督)が打点王のタイトルを取った後、翌年(06年)からバタッと成績が落ちた。今年1月に、本人にあらためて何があったのか聞き直した。「ホームランを打ちたくなったので、ボールを引きつけて確実にとらえようと思った」と振り返っていた。

本塁打を狙うことは悪いことじゃない。今岡の例で言えば、ひきつけて確実にとらえることが、成績が落ちた一番の原因だと思う。まっすぐか変化球かを見極めて振りだしたら、タイミングは絶対に遅くなる。打撃というのは、1度悪くなると修正がきかなくなる。阪神の打者もそういう傾向にあると思う。速い球を打てないのは、ヘッドスピードが遅い、とか体の切れが悪いとかそういうことじゃない。直球とスライダーの球速差は20キロぐらいあるが、それを待って打とうと思っても無理なんだ。方向性を誤ったり、勘違いすると取り返しがつかなくなる。

タイガースの選手は、打撃フォームはいいが、実際に試合で打てるのか、という話になる。キャンプ当初はコーチに教えてもらえるから形はいい。それに打撃練習はまっすぐ中心だから、打てる。それがより実戦的になるオープン戦中盤から毎年打てなくなる。コーチは間違ったことはそんなに言わない。「体を開くな」「突っ込まないほうがいい」といったアドバイスがあるが、確かにするより、しないほうがいい。そういう言葉の1つ1つを選手が本質として、どういうことなのかを考えるべきなんだ。助言をきちんと理解しているのか、が大事だ。

私はプロに入った頃、顔に死球を受け、鼻を骨折した。その後、打席に入ると、怖くて、体が開いてしまう。ある時、竹之内(雅史)さんに「開くなら、最初から開いておけ」と言われた。なるほど、そういう打ち方もあるなと思った。必死に考えて試行錯誤した。いつでも逃げられるフォームにしておけば、怖さは消える。そこから打撃は良くなった。

秋季キャンプでは練習量をこなすだろう。フォームを改造するのに的を射た練習をすれば身になる。間違ったことをやって、フォームが固まってしまうと悪い癖になる。秋はコーチだけじゃなく、バッターや投手とじっくりと話せる時期だ。酒でも飲みながらね。各自がもう1度、バッティングを見直すべきだ。

◆阪神近年の生え抜き野手 長年チームの中心だった鳥谷が入団した04年以降、阪神にドラフト入団して規定打席を満たした選手は8人、13度。鳥谷は05~17年に連続で計13度到達しており、他の野手が束になってやっと鳥谷1人分だ。到達回数最多は上本の3度で、安定して定位置を守った選手が不在だったことが分かる。またこの間、打率3割をクリア、またはセ・リーグ10位以内に入った選手はゼロ。金本、新井、福留、糸井ら移籍選手に中軸を任せざるを得なかった実態が浮かび上がる。