甲子園で借りを返す! 阪神からドラフト3位で指名された横浜・及川雅貴投手(18)が7日、横浜市内のホテルで入団交渉を行い、契約金5000万円、年俸600万円で仮契約を結んだ。今年のセンバツ明豊戦で3回途中5失点でKO。聖地で味わった悔しさは今も忘れない。プロ1年目の1軍デビューを目標に掲げ、本拠地のマウンドでリベンジを誓った。(金額は推定)

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自らに課したプロ最初のミッションは、嫌な記憶をぬぐい去ることだ。及川にとって、来季から本拠地となる甲子園のマウンドは、最も悔しかった場所だった。今年のセンバツ1回戦で明豊打線に3回途中5失点でKOされた。仮契約を終えて、その苦い味がよみがえった。「一番悔しかった。甲子園がホームになるので、悔しい思いっていうのはしっかり晴らしていかないといけない」とリベンジを誓った。

中学生ですでに最速140キロを計測。強豪・横浜に進学して「スーパー1年生」の異名をとった。しかし決して順風満帆に歩んできたわけではない。大船渡・佐々木、星稜・奥川、創志学園・西とともに「高校BIG4」と呼ばれたが、U18高校日本代表には及川だけが招集されなかった。それでも「高校BIG4と呼ばれていたことに関しては、プレッシャーは感じていなかった。高校時代はそう言われていても、今度は違う世界」と気にしない。わが道を行くスタイルはプロ向きかもしれない。

最速153キロを誇るが、球速だけに固執しない。「スピードが出ていても、質が悪かったり回転軸が悪かったら打たれる。キレやスピンの良いボールを目指したい」と質の高い速球を追い求める。担当の吉野スカウトは「投げっぷりが良くてストレートが強い。伸びしろも十分にある。ゆくゆくは先発でローテを守れるポテンシャルはある」と期待を寄せる。

今回のドラフトは1位西や2位井上ら甲子園を沸かせたスターがそろった。及川が掲げた目標は大きかった。「開幕1軍を目標に、将来は200勝以上という数字を目指していきたい」。リベンジの舞台を1年目からつかみ取る。反骨心を胸に、聖地での悔しさは聖地で返す。【只松憲】

○…及川が「オヨヨ」効果を実感した。10月23日の指名あいさつで「オヨヨ、と呼んでいただけたら」と自ら報道陣へ伝えると、桂三枝(現6代桂文枝)のギャグにちなんで、大々的に報道された。「あんなに大きく載せていただけるとは思ってなかった。びっくりしました」と笑顔を見せた。その後、学校では省略して「オヨ」と呼ばれることが多くなったという。

◆及川雅貴(およかわ・まさき)2001年(平13)4月18日生まれ、千葉県出身。須賀スポーツ少年団で野球を始め、八日市場二中では匝瑳(そうさ)シニアに在籍。横浜に進み、甲子園には1年夏、2年夏、3年春と出場した。直球の最速は153キロで、鋭いスライダーも武器とする左腕。50メートル走6秒0、遠投110メートル。183センチ、74キロ。左投げ左打ち。

◆19年センバツ横浜-明豊戦VTR 横浜及川は大会ナンバーワン左腕と評され、大会2日目に登場。味方打線が2回までに4点を先取。先発した及川も2回まで無失点投球だったが、3回に暗転。連続四球からリズムを崩し、上位打線に集中打を浴びて2回2/3を5失点でKOされた。降板後は右翼守備につき、8回途中から再登板し1回1/3を無失点。三振も計4回で6個奪ったが試合は5-13で完敗。試合後、及川は「自分の実力不足。すべてにおいて一からやり直しです」と反省した。