完全復活への1歩。広島中崎翔太投手(27)が14日、広島・廿日市市内の大野練習場でリハビリを開始した。6日に広島市内の病院で右膝半月板部分切除手術を行い、前日13日に退院した。松葉づえ姿でチームメートと笑顔の再会。限られたメニューをこなしながら、来春キャンプでの投球再開を目指していく。

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手術の傷痕は痛々しくても、中崎の表情はすっきりしていた。「来年もっといいパフォーマンスができるように」。退院から一夜明け、松葉づえ姿で大野練習場に現れた。チームメートや首脳陣にも笑顔で、周囲に気を使わせようとはしない。しばらく地道なリハビリ生活が続くが、悲愴(ひそう)感はない。選んだ決断に一点の迷いもない。

シーズン終了後に検査を受け、メスを入れることを決断した。昨年まで4年間で257試合に登板。守護神として3連覇に貢献した。悲鳴を上げたのは踏み込む左足ではなく、軸足の右ひざだった。「しっかり軸足1本で立って、重心が乗る。投げていく上でひねりながら上(体)に伝えていく。僕にとっては重要な場所。重要な場所だからこそ、その決断ができた」。完全復活には避けられない選択。今月6日に右膝半月板部分切除手術を終えた。

シーズン中から影響はあったはずだ。開幕から抑えを任されたが、精彩を欠き、役割が代わって2軍にも落ちた。36試合で3勝3敗9セーブ、防御率4・08。それでも言い訳は一切口にしない。「やれると思ってやった結果…。そこは言いたくない。今年よりも、来年いいパフォーマンスをもっと出せるように決断した」。手術の時期は来季への調整に大きく影響する。個人のことだけを考えれば早めることもできたが、クライマックスシリーズ進出の可能性もあったチームのため投げ続けることを選んだ。プロとして選んだ道に後悔はない。

私生活にも影響はある。自宅のある広島市内から大野寮まではタクシー移動。「楽だからいいですよ」という強がりも、中崎らしい。この日のリハビリは肩周りと患部周辺の強化のみ。動けない、投げられないストレスは今後も待ち受ける。それでも来春キャンプ中の投球練習再開を目指し、1歩1歩進んでいくしかない。その先にきっと、完全復活が待っている。【前原淳】