さよなら、は言わない。今季限りで楽天を退団しヤクルトへ移籍する嶋基宏捕手が24日、楽天生命パーク宮城での古巣のファン感謝祭に参加した。

当初予定はなかったが、お笑い芸人サンドウィッチマンの声かけでマイクを握った。楽天の選手として最後のイベントに泣きだすファンもいたが「僕は泣かないと決めているので大丈夫です」と小雨の降るグラウンドで笑顔を絶やさなかった。

通算1402試合。07年からプロ野球人生の全てを東北にささげてきた。「0-10で負けていても最後まで温かく応援していただいた。いつも僕の背中を押してくれたので忘れることはない」。1位から6位まで全順位を経験。どんな時もひとりじゃなかった。「街を歩いていても声をかけていただけたことは楽天が仙台に根付いている証拠。その中でプレーできたことは宝物にしたい」。刻み込まれた記憶が走馬灯のように脳裏を巡った。

本拠地で“662試合目”のマスクもかぶった。今江育成コーチの引退セレモニーで今江コーチの長男陸斗くんとバッテリーを結成。ファンからは「また楽天に戻ってきてください」との声も飛んだ。ただ、選手である以上、振り返り続けるわけにはいかない。「いつまでも引きずってはダメ。仙台で試合ができるように元気にプレーしたいです」。34歳嶋基宏が、底力を見せる。【桑原幹久】