九州南方に浮かぶ島から1枚の写真が届いた-。広島長野久義外野手(35)が西武内海哲也投手(37)と肩を組んで並んでいる。昨オフ、巨人からの移籍で話題の中心を担った2人のベテランが奄美大島で合同自主トレを行っていたことが判明した。練習量の少なさでは球界トップ級の長野が、練習の虫とされる内海のハードトレに食らいついた。

「そろそろ引退か」「もうダメか」。世間の声はいや応なしにも耳には入る。積み上げた実績だけで結果が出るほど甘い世界ではないと熟知する。長野は「とにかく下半身を鍛えてた。これだけ練習している内海さんの姿を見ていたら妥協できない」。若かりし頃、巨人阿部(現2軍監督)とのグアム自主トレに匹敵するハードトレを積んだ。

広島に移籍した昨季、72試合の出場にとどまった。プロ10年目で最も少なかった。打率は2割5分。5本塁打はプロ入り後初めて1ケタに終わった。「新しい環境で、というのは何の言い訳にならない。自分の力がなかった。何も貢献できなかった」。広島ファンはもろ手を挙げて自身を迎えてくれた。球団もチームメートも同様だった。だから何としても結果で示したかった。

孤独との闘いだったかもしれない。自分のことより、人のこと。気配りは気がつけば己への重圧にもなる。昨季2月の日南キャンプ中だった。隣接する南郷でキャンプ中の内海と途中で落ち合い、タクシーで相乗りして宮崎・清武町のなじみの店に向かった。巨人時代から通う地鶏の炭火焼き「鶏」で七輪を囲んだ。

内海 今は少し肩の荷も下りて自分のことだけに集中できる。その意味では気楽になった。長さんはどうなん?

長野 僕はきついです。期待されすぎて…。僕は新井さんにはなれないし、全然及ばない。チームをまとめる力なんて僕にはない。でも、そういう雰囲気を感じるんですよね…。

巨人の投手陣をまとめ上げ、リーダーシップを発揮してきた内海の問いに長野は素直な心境を明かした。あれから約1年。内海も昨季は1軍未登板に終わり、手術からの復活を期す。じくじたる思いを胸に奄美大島でともに汗を流した。老いていく体にムチを入れ、気力と気持ちを奮い立たせた。旧友との過ごした時間の中で腹は決まった。再起-。新天地で2年目がもうすぐ始まる。【為田聡史】