18年のドラフト5位で、山形中央高出身の左腕、楽天佐藤智輝投手(19)が心機一転、2年目のシーズンに臨む。

昨年は1月の新人合同自主トレ中に打球を左手薬指に受けるアクシデントで出遅れた。イースタン・リーグ2試合の登板にとどまり、不完全燃焼のままルーキーイヤーを終えた。今オフの自主トレでは、マリナーズ菊池雄星投手(28)に弟子入りし、飛躍を誓った期待の左腕が、待望の1軍デビューを目指す。

   ◇   ◇   ◇

苦しかった1年のうっぷんを晴らすかのように、佐藤は久米島2軍キャンプで躍動している。ブルペンでも、しなやかなフォームから威力のあるボールを投げ込み「順調です」と、人なつっこい笑顔を見せる。

ちょうど1年前、キャンプを途中離脱し、1人で仙台に戻った絶望感を忘れない。夢に満ちあふれていた新人合同自主トレ中に、左手薬指の靱帯(じんたい)を損傷した。「やっちゃったなと。ボールを投げられなくて、どん底でしたね」。約2カ月間、患部を固定も回復の兆しは見られず、4月に手術を行った。果てしなく落ち込んだが、間近に、右肘手術から復帰を目指すエース則本昂の姿があった。「あれだけキャンプで調子がよかったのに、そこからケガしたら、僕だったら相当落ち込んでしまう。やっぱり前を向いているんだなと。自分なんかがこんなんで腐っていられないと思った」と奮い立った。

6月中旬に練習再開も、投球感覚が取り戻せない。もがき苦しむ状況で、首脳陣から「とりあえず1回投げてみるか」と言われ、初登板した8月6日のイースタン・リーグDeNA戦で、4球目に高校時代の最速を2キロ上回る146キロが出た。「ボン!という感じで。モヤモヤがバッと取れました」。この間、体重も14キロ増えて筋力もアップ。まさに、けがの功名だった。

貪欲に、トライした。同じ左腕で東北の大先輩マリナーズ菊地に、自主トレ参加を志願した。高校時代のトレーナーが菊池を担当していた縁もあり実現。1月2日から2週間、米アリゾナで行動をともにした。費用は約50万円かかったが「技術はもちろん、体への気配り、考え方も一流で、トレーニングに対する知識がすごかった。筋肉の部位も全てわかっているくらいで」と、得たものは大きい。

一昨年9月に就任した石井一GMの鶴の一声で、ドラフト指名された秘蔵っ子。石井貴2軍投手コーチは「左で上から投げ下ろす躍動感があるし、何より振る舞いとか投げっぷりがピッチャーらしく、マウンドさばきにも雰囲気がある」と素質を評価する。西武時代の後輩菊地への弟子入りについても「雄星は研究熱心。そういう姿勢も学んでくれれば」と期待を寄せる。文字通りリスタートの2年目。「1軍の戦力として求められるピッチャーになりたい。仕方なくだとか、経験のためとかではなく、『この場面は佐藤に任せよう』と思われるように」。山形の星から、東北の一番星となる。【野上伸悟】