西武が“優勝”を決めた。木村文紀外野手(31)が2-2で迎えたロッテ戦(メットライフドーム)の9回、バックスクリーンへ豪快なサヨナラアーチをたたき込んだ。野手転向8年目となるスラッガーの「レギュラーは渡さない」という気持ちのこもった1発。チームは3月のオープン戦に続き、6月の練習試合も制覇した。パ・リーグ3連覇へ向け、最高の形で開幕を迎える。

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打った瞬間にそれと分かるきれいな放物線だった。同点の9回。木村は1ボールからロッテ東妻の146キロ直球を振り抜いた。シュート気味に真ん中に入ってきたミスピッチを逃さず強振。バックスクリーンへ運んだ。「率直にうれしい。先頭打者だったので、しっかりと投手のタイミングに合わせて打ちにいった結果がたまたまホームランになった。いいタイミングで振りにいけたかなと思います」と納得の一打だった。

新型コロナウイルス対策のため、サヨナラ勝ちを祝うハイタッチもなければ、ダッグアウトから選手が飛び出してくることもなし。「コロナなんで仕方ないんじゃないですか。開幕しても最初無観客でいくので、その中で頑張っていくしかないと思います」。普段のサヨナラ勝ちとは違う静かな幕切れだったが、ダイヤモンドを1周してベンチに腰を下ろした木村の顔には満足感が表れた。

投手として西武に入団したが、埼玉栄高時代には高校通算33本塁打。打者転向間もない13年には、新人だった日本ハム大谷(現エンゼルス)から2軍戦で2発を放ったこともある。今年は金子、スパンジェンバーグが外野のレギュラーとして決定的。木村は定位置争いで川越と鈴木に追われる立場となったが、パンチ力で右翼レギュラー当確ランプをともした。辻監督も「(練習試合に起用しない時は)ちょっと背中から腰にかけて張りがあったけど全然問題ないです」とスタメン起用に太鼓判を押した。

これで西武はオープン戦に続き“練習試合優勝”。山賊打線は打ちまくり、今年も強いというところを印象づけた。木村は「開幕して調子を落とすのじゃなくて、今を1として、ここからどんどん上げていけたらいいと思います」。チームを優勝に導くため、自慢のバットを振りまくる。【千葉修宏】

◆木村文紀(きむら・ふみかず)1988年(昭63)9月13日、東京都生まれ。埼玉栄では4番でエース。06年高校生ドラフト1巡目で西武入団。09年12月に登録名を文和から改名。12年に投手から外野手に転向。昨季は自己最多の130試合に出場した。通算成績は投手で41試合、1勝4敗、防御率5・60。打者では539試合、31本塁打、105打点、打率2割1分6厘。183センチ、87キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸4500万円。