広島堂林翔太内野手(28)が一振りで試合を決めた。1点を追う8回1死満塁でDeNAパットンの148キロを「狙った球をしっかり振り抜くことができた」と強振。14年4月19日DeNA戦以来となる逆転の3号グランドスラムをバックスクリーンへたたき込んだ。

296日ぶりに三塁で先発出場した。1回無死一、三塁でオースティンのゴロを二塁へのジャンピングスローでさばき、併殺を奪った。佐野の三遊間の痛烈な打球もダイビングキャッチ。一塁送球を松山がそらして堂林に失策がついたが、懸命なプレーだった。「派手さはなくても、1つのアウトを泥臭くシンプルにという気持ちでいきました」。すでに新グラブも新調し、正三塁手の奪取に意欲的だ。

昨年28試合出場は自己最少。「試合に出られればどこでもいい」。出番に飢えていた。バットヘッドを走らせるため、両手を数ミリ空けてグリップを握るようにした。開幕が延期になった期間はより離して意識付けした。「不器用の一番の強みは、はまったらやり続けられること」。全試合出場の12年から、遠回りして輝きを取り戻しつつある。

“朝活”の成果もある。同学年でエースの大瀬良が今年から始めた超早出のランニングに堂林も並走するようになった。体の準備だけでなく、トレーニングや練習で取り組むことを頭の中で整理する大事な時間となった。打席の中でも「球種うんぬんというよりも、自分の打席に集中力を持ってやれている」と胸を張る。

7回まで15残塁の拙攻という重苦しい空気を一掃。佐々岡監督は「一番打ってほしいところで、最高の形で打ってくれた」と殊勲者をたたえた。堂林は3回の同点打と合わせて5打点、さらに首位打者に踊り出た。広島は7月初勝利で連敗を4で止めただけでなく、レギュラー不在だった三塁問題も解決した。【前原淳】