淡々とマウンドに上がり、堂々たる投球を披露した。

西武平良海馬投手(20)は、7回先頭の楽天銀次を151キロの直球で押し込み二ゴロに打ち取った。開幕から無安打で27個のアウトを積み重ね“ノーヒットノーラン”を達成。「開幕からヒットを打たれていなくて、それが9回まで近づいていることは2試合前くらいから分かっていました。ただ、試合中は意識することはなかったです」。弱冠20歳。巨漢の風貌からは貫禄すら感じさせた。

3年前は想像もしていなかった。沖縄・八重山商工では部員が足りず3年の春は連合チームのエース。そこで運命が変わる。152キロをマークして、一躍プロ注目の投手となった。きっかけは、2年の秋に見た元同僚・菊池雄星(現マリナーズ)の密着番組。「雄星さんがウエートトレーニングをしていて、自分でもやってみようと。見よう見まねではケガをする。ジムを探して通うようになりました。150が出たのもそのおかげ」。秋、春、夏のいずれも初戦敗退でも、自力で細い糸をたぐり寄せた。

プロ2年目の昨季、後半戦から頭角を現した。その巨漢から繰り出される最速158キロの剛速球とは対照的に、寮に飛び込んできたクワガタを飼うキャラクター。心優しき右腕が今季登場曲をE-girlsの「Follow Me」に代えたのも理由があった。「昔の映像を見ていたら(高橋)朋己さんが使っていた。帰ってくるまで使わせてくださいってお願いしました。戻ってきたときには、お返しします」。度重なるケガで育成契約から復活を目指す先輩との約束だった。

3者凡退に抑え、10試合9回2/3を無安打無失点。新人王の権利も持つ右腕は「今後も0で抑えて帰ってくることができるよう、しっかり準備していきたい」と言い切った。【栗田成芳】