「執念の半足」が大きな1勝を引き寄せた。DeNA大貫晋一投手(26)が、6回1失点の好投で3勝目を挙げた。巨人戦はプロ通算4戦目の先発で初勝利。自身3連勝をマークした2年目右腕は、6回の打席で12球も粘って巨人先発メルセデスのスタミナを削り、7回の逆転につなげた。アレックス・ラミレス監督(45)も執念の継投で逆転勝ちをもぎ取った。チームは2カード連続の勝ち越しで勝率を5割に戻し、3位に再浮上した。

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大貫がトリックを仕掛けた。同点の6回先頭で打席に入った。巨人メルセデスとの投手戦は正念場に差し掛かっていた。直球を2球見逃してカウント0-2。直後、短く握ったバットを手に、ホームベース方向に半足、前へ出た。

マウンドの相手左腕の疲労は、見なくても分かる。じわじわとダメージを与えていくことが得策になる。ボールが3球。ファウルが6球。計12球を投げさせた。思惑どおりの見逃し三振に、意気揚々とベンチへ引き揚げた。

1点を追う7回に、仕掛けたトリックがさく裂した。2死からロペスが左前打。宮崎が四球を選び好機が訪れた。仕事を全うした大貫はベンチに腰を下ろし、ただ眺めているだけで良かった。代打嶺井。メルセデスの球数をデッドラインに追い込んだ。嶺井が114球目を仕留めて同点打。倉本も逆転打で続き、鮮やかに勝利をかっさらった。

必然的な好機は「111球」というデッドラインがもたらした。

投手戦はマウンドだけが勝負ではない。9番目の打者として、大貫が執念としたたかさを発揮した。メルセデスはスタミナに難がある。110球以下では7勝2敗も、114球以上では1勝1敗に激減する。6回の打席で大貫が粘った12球が勝ち星に直結した。すべて一塁方向へカットした6球のファウル。少しでも投げにくくしようと前のめりに踏み出した半足が、勝負の潮目を動かした。

ストライク先行の6回1失点、93球。首位巨人からマジシャンのごとく、涼しい顔で逆転勝利を運んだ。ラミレス監督は「非常に我々には大きな2連勝。特に今日、7回に2死から逆転。初戦を落として勝ち越し、5割に戻せたことも大きい。非常に意味のある3連戦だった」と納得。大貫も「要所を締められたことは良かった。次も勝てるように頑張って投げます」と言った。アッと驚く快進撃を披露する。【為田聡史】