燕のサブマリンの、気持ちのこもった97球だった。約2年ぶりの白星を目指して今季初先発したヤクルト山中浩史投手(34)は、8回を被安打4の無失点に抑えた。白星はつかなかったが「すごく楽しく投げられた。立場は分かっているので、腹をくくって、自分の投球をしようと思っていた」と振り返った。

2軍生活で世話になった指導者やトレーナーの喜ぶ顔が見たかった。最速123キロで、最遅は95キロ。持ち味を存分に生かし、緩急を使いながらコーナーを丁寧に突く投球。4、6回は9球、5回はわずか8球で3者凡退とした。昨季は1軍で4試合に先発し0勝。今季も2軍キャンプから始まり、イースタン・リーグを経て今日の機会をようやくつかんだ。崖っぷちにいることは、分かっていた。「この年で2軍にいるということは、チャンスは本当に少ない。数少ないチャンスを、今日に関してはモノにできたかな」。打線が中日梅津を捉えられない中、山中が粘って連敗を2で止めた。高津監督は「ストライク先行で、彼らしいテンポのいい投球。ぜひ勝ちをつけてあげたかった。また次、投げてもらいたい」と次回登板を約束した。【保坂恭子】