銃弾9発を撃たれても、生死の境目から復活した-。米国のラッパー「50 Cent」。代表曲「In Da Club」の登場曲に合わせ、巨人中島宏之内野手(38)が、打席にやってきた。3点リードの6回1死二、三塁。初球から3球直球を続けるゴンサレス。4球目はリズム一転。チェンジアップで緩急をつけられても、中島は崩されない。左手をピンと伸ばしたフォロースルー。史上107人目の通算200本塁打を左中間席中段へかました。「まだまだ打てるだけ打ちたいなと思います」。相手に恐怖を与える1発を打ち込み続ける。

「50 Cent」のように“生還”した。移籍1年目の昨季は、わずか43試合の出場で打率は1割4分8厘、本塁打は「1」。屈辱を味わった。「野球人生をかけた勝負の年」と臨んだ2020年。バットを構える位置を昨年よりも下げた新フォームで始動。「やるしかないんよ」とキャンプから振り込み、自分のビートを磨いてきた。既に昨シーズンを上回る「5」号で、メモリアルに到達。昨季から使う登場曲は開幕前に「変えようかな」と話していたが、変わらず“復活”のリズムに乗る。

伊丹北(兵庫)を卒業し、00年ドラフト5位で西武に入団。気付けば、20年の時が経つ。その後、米国に渡り、オリックスを経て今-。長く第一線を張る理由を「若い選手と一緒のようにうまくなりたいと思いながら、毎日練習して、あーでもない、こーでもない言うて試行錯誤しながら取り組んでることです」と話す。昨季からカムバック。完全復活し、ステージ上でさらに輝く。【栗田尚樹】

◆50 Cent アメリカ出身のヒップホップアーティストで、俳優などもこなす。過去に銃弾9発を浴びる銃撃事件に巻き込まれたが、命は取り留めた。その後、人前に登場する際には、防弾チョッキを着用することが多く、その姿でも話題となった。巨人中島が登場曲に使う「In Da Club」は代表曲の1つ。

▽巨人原監督(中島の通算200号に) 非常にナカジらしい勝負強い打撃が出てきましたね。春先から強い覚悟の中で野球に取り組んでいる。(フォーム変更は)すごいキャリアを持つ中で、これがベストである、とやっている。覚悟と決意があったと思います。