山賊が混パに乱入する。西武の中継ぎ・平井克典投手(28)がプロ初先発し、5回2安打無失点の好投で今季5勝目となる白星を収めた。昨季81登板でパ・リーグ最多登板記録を更新したリリーバーを、先発起用する奇策が的中。投打がかみ合ってきたチームは、7連敗から引き分けはさんだ5連勝と積み重ね、上位4チームの背中に食らいついていく。

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立ちはだかる自身の壁を、平井は初めての先発マウンドで乗り越えていった。4回を終わって1安打無失点。これまでプロ入り最長は2回1/3、最多球数は48球だった。5回先頭の4番ジョーンズに47球目を二塁打され、初めて得点圏に走者を背負っても動じない。ロドリゲスを一邪飛、中川を一ゴロ、宗を遊飛に打ち取り5回2安打無失点。堂々たる投球で勝利投手の権利を得た。

初めての先発白星。「初めての経験で右も左も分からない状態でしたが、いつも通り投げようと心がけた」。昨季パ・リーグ最多記録を更新する81試合に登板。プロ入り210登板の中継ぎでいずれもなかった真っさらなマウンドを、リズムよくさばいた。先頭に内野安打を許し、二盗を仕掛けられるも盗塁死。さらに2番吉田正に四球で再び走られるも、森が刺した。いずれもリクエストで判定がアウトに覆るベンチワークにも救われた。

神様、仏様、平井様。そう呼ばれた昨季。登板数を積み重ねていた道中で、ふと口にしたことがあった。「いつかは先発でやってみたいという気持ちがある。せっかくなんで、チャンスがあれば挑戦してみたい」。そんな“野望”は中継ぎマウンドではいっさい封印。プロ4年目でようやくかなったチャンスに燃えないはずがなく、50球を超えても球威は衰えず投げきった。

次回登板は未定だが「いつか任されるのであればまた投げたい気持ちはある」と、中継ぎを軸にしながら心の準備は続けていく。チームは5連勝で、5年ぶり7連敗の借金を着々と返済。2連覇のプライドを胸に、戦国パ・リーグをのし上がっていく。【栗田成芳】

▽西武辻監督(先発初勝利の平井に)「5回まで投げてくれて御の字。これで調子乗って先発やりたいって言い出したら、ふざけんなっていうところだけど(笑い)。そういう投手事情になれば(先発も)選択肢の1つになる」

▽西武森(初回に盗塁2つ刺して平井を援護)「立ち上がりはどんな投手も不安はあるもの。特に今日は(中継ぎの)平井さんでしたし。そんな中、初回2つ盗塁阻止ができ、0に抑えられたことは大きかった」