描いた夢が、現実になっている。オリックスのラオウこと杉本裕太郎外野手(30)と吉田正尚外野手(27)の“青学コンビ”は、8年前も3、4番を組んだ。

3番が吉田正で、2学年上の杉本が4番。ともに外野グラウンドで白球を追い、得点を奪って歓喜する姿は、今も変わらない。2人は15年ドラフト1位&10位で入団。杉本が青学大を卒業する際、吉田正が「2年後、同じドラフトでね」と記した、アルバムの1ページが原点。プロで復活した「ラオウ&ハーパー」の絆で、チームを波に乗せる。

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ラオウ杉本は、努力で夢を正夢にしている。「3番吉田正、4番杉本」の並びは、青学大時代の8年前から形成されていた。

固い絆-。杉本には大切な1ページがある。14年3月、青学大を卒業する際にもらった「マネジャーが作ってくれたアルバム」。そこに吉田正が、こう記している。「2年後、同じドラフトでね」。後輩に優しく、愛されキャラの杉本は、目頭がぐっと熱くなった。

その言葉を励みに、杉本はJR西日本で2年間、鍛錬を積んだ。そして、運命の15年10月22日。一生忘れられない1日が訪れた。大学4年になった吉田正が、オリックスにドラフト1位指名された。大学JAPANでも躍動した後輩の指名を、心から祝福した。

その後も続々と進むドラフト指名。だが、杉本の名前は、呼ばれない。「思いましたよ。指名されないのかな…って」。そのときだった。オリックスがドラフト10位で、杉本の名を呼んだ。喜びと驚きが交差した。「え!? ドラフトって、10位まであるんや」。社会人で黙々とバットを振り「野球で生きていく」夢を現実にした瞬間だった。

背番号99は「一番最後に指名されたから」で、成り上がる意味も込めて「(2桁で)1番大きな番号」を選んだ。「指名がなかったら、野球をやめていたかもしれない。もちろん、恩がある」。だから、今を必死に生きる。「ずっと2軍で悔しい思いをしてきた。その気持ちは今もある」。中嶋監督に努力と才能を見いだされ、プロ6年目で自身初の開幕1軍&開幕スタメンを勝ち取った。

徐々に調子を上げてチームトップの8本塁打。ここまで3番吉田正、4番杉本の中軸が今季は12試合あり、プロでも定着してきた。普段は「裕太郎さん」と呼ぶ吉田正も「“杉本先輩”の調子が良いので、自分も頑張ります」と笑顔。切磋琢磨(せっさたくま)が相乗効果を生んでいる。

入団当初は「ラオウ」のキャラを意識し過ぎ「正直、ホームランしか狙ってなかった」が、今季は確実性も増し、打率は3割1分8厘。14日の楽天戦(ほっともっと神戸)で4打席立てば、規定打席に到達し、ランキング上位に顔を出す。

11日の日本ハム戦(東京ドーム)では看板直撃の特大アーチを描き、賞金100万円をゲット。本塁打を放つと飛び出す「昇天ポーズ」も板についてきた。今季で30歳。コロナ禍もあり「野球ができることが当たり前じゃない。幸せだなと感じて、前向きにやるだけ。楽しく、思い切って」。

8年前、熱い1行をくれた後輩と「ラオウ&ハーパー」のタッグで、5位からの逆襲を期す。描いた夢は、夢のままで終わらせない。【真柴健】