阪神のドラフト1位佐藤輝明内野手(22)が初の1試合3本塁打でプロ野球界を仰天させた。「日本生命セ・パ交流戦」の西武戦で2回に先制の11号ソロ、6回は12号ソロ、そして9回に決勝の13号3ランを放った。新人では史上4人目、巨人長嶋以来という快挙。3安打5打点でチームを12球団最速の30勝に導き、本塁打キング争いでもトップに並んだ。怪物ルーキーが山賊たちを黙らせた。

   ◇   ◇   ◇

怪物ルーキー、佐藤輝は確信を持ってゆっくりとダイヤモンド1周へ歩みを進めた。腕を広げ、両方の人さし指を天に突き上げる。同点の9回2死一、三塁。ギャレットの154キロを振り抜き、右中間席奥のコンコースへ13号3ランをぶち込んだ。新人では58年長嶋(巨人)以来の1試合3本塁打でシーソーゲームにけりをつけた。「毎日1本でも多く打ちたいと思っていますし、こういう結果が出たのでうれしいです。勝利に直結したところが一番うれしい」。高い放物線と、その言葉、風格はもう一流アーチストのそれだった。

「輝祭り」の幕開けは2回だ。高橋の外角フォークに体勢を崩されながら右手1本で拾い、低い弾道のままバックスクリーンまで運んだ。打たれた高橋も打球の行方をじっと見つめ、驚きの表情を浮かべた。「必死に食らいついていった結果、入って良かったです」。13試合ぶりとなる先制の11号ソロ。自身最長ブランクを乗り越えて勢いに乗った。

2発目は6回。再び高橋から。内角144キロ直球に詰まらされながら左中間へ12号ソロを運び、サンズとの2者連続本塁打とした。そして3本目。「みんなでつないだチャンスだったので、何とかここで1本という気持ちでいきました」。打席での心構えはそのままバットに乗り、「一番感触が良かった」と手応えは十分だった。

「聖地」で大暴れだった。メットライフドームはももクロが初のドームライブを行うなどゆかりのある球場。佐藤輝はモノノフ(ももいろクローバーZのファン)で知られ、ヒーローインタビューでは「メットライフで打てて良かったです」と笑った。29日には「推しメン」の高城れにが玉井詩織とともに同球場でラジオ中継のリポーターを務める。最高の来場前祝いとなった。

矢野監督は怪物ルーキーに「いやあスゴかったなあ…。もうこれはもう俺の生涯忘れることできひん試合の1つになるな…スゴかった」と驚きを隠せなかった。13本塁打は巨人岡本和、ヤクルト村上と並び、リーグトップ。球団新人では48年別当と並んで3位で、もちろん左打者では佐藤輝がトップを独走している。残り2試合、甲子園と並んで大好きなもう1つの「聖地」で暴れ回る。【林亮佑】

 

◆58年長嶋の1試合3本塁打 6月22日大洋戦(川崎)の3、6回に3ラン、8回にソロで計7打点。3本とも左翼へ場外弾を放ち「いやあ、今日はおかしいですよ。あまりにもツキすぎです」。