あどけない笑顔に、抜群の勝負度胸―。山本由伸投手(22)が、新生オリックスの象徴となっている。マウンドでは、極めて自然体。150㌔を超える異次元の変化球で好打者を抑えれば思い切り叫び、打たれても苦笑いで、また前を向く。オンでもオフでも無邪気さは変わらず、応援するファンを、ときにはチームメートを癒やす。

「運がいいんです、僕は。人生の分岐点でステキな人に出会えているだけ。周りの方に感謝しかありません」

19年秋のプレミア12で、世界一に貢献。今夏の東京五輪に選出されても、おごりなく、さわやかに話す。日本を代表する主戦投手になっても、その素顔は変わらない。

山本は岡山県・備前市出身。頓宮裕真捕手(24)とは幼少期からチームメートで、実家は〝お隣さん〟だった。運命なのか―。オリックスでも21年開幕バッテリーを組んだ。

「まさか…ですよね。頓宮さんは、昔からずっと輪の中心にいるタイプ。存在感が抜群ですね」。幼い頃は「ユウマくん」と呼んでいたが、大人になった今は「頓宮さん」と呼び、照れる。

【頓宮は寂しさ語る「昔はユウマくん」と呼んでくれていたのに…】はこちら>>

「頓宮さんの、規格外エピソードがあるんです」と笑うのは、中学時代の逸話だ。「学校のカバンから2リットルのジュースが出てくるんです…」。話し出すと、笑いが止まらない。「備前中は、1年生が3階で、3年生が1階。僕が、帰り際に下をぼーっと見ていたら、頓宮さんのバックから、なぜか2リットルのジュースが出てきて…。普通にゴクゴク飲んでいて、この人すんごい!って」。2学年差でも、距離感が程よい。

若い才能が次々と出てくるチームで、山本は先輩とも後輩とも絶妙の空気感でふれ合っている。16年ドラフトで同期入団の山岡泰輔投手(24)については「先輩ですけど、かわいさがありますよね」とニヤリ。「山岡さんは、全部を誰かと行動したいんです。例えば、ご飯。絶対、誰かと一緒。練習でもそう。ああ見えて、寂しがり屋? なのかな…」とイジってみせた。

ブレイク中の宮城大弥投手(19)には「人懐っこい。みんなに愛されてますね。ついつい、いじっちゃいます」と目尻を下げる。そしてこう続けた。「ただ…、今、練習しないと2、3年後には負けちゃう可能性がある。そういうわけにはいかないんで、練習を頑張ります!」と発奮材料にもしている。

後輩左腕にイラっとした瞬間もあったそうだ。「聞いてくださいよ! ビジター球場で、ゆっくりお風呂に入ってたんです。YouTubeとか、動画を見たりするんですけど…」。突然、スマートフォンの画面に、「宮城」の文字が映った。「電話です。『もう帰りますよ!』と言われたんです。まじか…。(宿舎に)帰る時間が変更されたんだ!」と急いで体をタオルで拭いた。「慌てたら、うそでした。あのいたずらは、最近の怒りですね」。この和気あいあいとした雰囲気が、好調なチームの要因でもある。

「僕は、昔から、野球を頑張るか、友達と遊ぶのが大好きでした。その2つが、自分のすべてなんです」

今夏、23歳を迎える。大人になった今でも、野球少年のような気持ちは変わらない。「とことん好きなんで。楽しいから自分で考えるんです。どんなときも、野球が楽しいと思えるから、いつも成長できるんです」。試合に勝っても負けても前を向く。

悔しさを表に出すのは、一瞬のこと。1週間、課題と向き合い、次のマウンドに上がる。

「勝つと、もっと楽しい。究極は、みんなが活躍して勝つこと。僕は、そのために一生懸命、投げるだけ」

超一流そろいだった黄金期の阪急、イチローを擁しリーグ連覇した90年代のオリックス。2年連続最下位からの逆襲へ。新時代のチームには、勇者ヨシノブと才能あふれる仲間たちがいる。【真柴健】

【オフショットなど20枚!オリ担当の真柴記者厳選の山本由伸写真特集】はこちら>>

【イケメンだらけの30枚!オリ担当の真柴記者厳選のオリックス選手写真特集】はこちら>>