オリックス山本由伸投手(23)が6回を2安打無失点に抑え、10連勝で両リーグ最多の13勝目を挙げた。最速155キロの真っすぐを主体に西武打線から9奪三振。修正力の詰まった107球だった。

数字は圧倒的でも、3回まで毎回得点圏に走者を背負い、63球。その3回を終えてトボトボとベンチへ戻ると、納得のいかない表情を見て中嶋監督が歩み寄った。山本は「技術的なこと、バッテリーの“ご指導”を。そんな感じです」と明かした。若月も交えた“緊急3者面談”が終わると、エースに笑顔が戻った。

「もう1回考え直すというか、もう1回(リズムを)作り直した感じです」

魔法の一言で、一変。4回は先頭の外崎を空振り三振、栗山を見逃し三振など、次第にしなやかなフォームを取り戻し、降板する6回まで1人の走者も許さない「完全投球」。中押しの攻撃へと流れを作った。

試合中に見事に立て直して13勝目。防御率1・54、154奪三振と合わせて「投手3冠」だが「絶好調だったわけではない。今日は勝ちましたし、無失点だから良いんですけども…。内容は最悪かなと思います」と反省を繰り返した。結果、内容、成長…。細部へのこだわりは、好物のイチゴにも通じる。イチゴ味のジャムやかき氷のシロップには「それは認めてないですよ。果物そのものが好きなんです」と笑って言い張る。本物を求めて公私に妥協がない。破竹の10連勝にも、「6回に良い感じで力も抜けて投げられた。反省点を生かして成長できたら」と天井知らずの向上心をみせた。

貯金を10に戻すも、ロッテも勝って首位返り咲きはならず。山本は吉田正の通算100号記念のTシャツに身を包んで声を張った。「すごく緊迫した状況で野球ができるのも、成長できる。1試合1試合がより大事になるのでチーム一丸で」。残り34試合。負傷離脱中の主砲の思いも背負い、全力を尽くす。【真柴健】

▼山本が5月28日ヤクルト戦から10連勝。オリックスでシーズン10連勝以上は10年に13連勝の金子以来7人、9度目。山本はプロ5年目の23歳。23歳以下のシーズンに2桁連勝は、22歳の07年に10連勝した成瀬(ロッテ)以来で、オリックスでは58年に13連勝の秋本に並び最年少だ。山本は、白星のつかなかった6月25日西武戦を含めた連勝期間中の防御率が0・89。この間、相手にリードを許したのは、岸に先制弾を浴びた8月20日西武戦の3回表(3回裏に同点)しかない。また、山本は勝利、防御率、奪三振とトップ。オリックスでこの3部門がすべて1位ならば初めてになる。