阪神桑原謙太朗投手(35)が20日、兵庫・西宮市内の球団施設で会見し、プロ14年目の今季限りでの現役引退を表明した。

横浜(現DeNA)、オリックスを経て、14年オフに自身2度目のトレード移籍で阪神と3球団を渡り歩いた。17年に最優秀中継ぎ投手に輝いた。近年は右肘痛に苦しみ、今季登板は7試合。虎のブルペンを支えた仕事人はペナント争いをする後輩たちにエールを送った。

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遅咲きの苦労人がユニホームを脱ぐ。スーツ姿で会見場に現れた桑原に涙はなかった。「阪神さんにトレードで拾ってもらって、活躍できたことが何より良かったかなと思います。自分の中ではやり切ったという思いが一番強いです」。時折笑顔をみせながら「不器用ながら、何とかプロ野球にしがみついてきたイメージです」とプロ14年間を振り返った。

希少な野球人生を歩んだ。07年大学・社会人ドラフトの3巡目で横浜(現DeNA)に入団。2度のトレード移籍を経て15年シーズンからタテジマに袖を通した。17年には当時の金本監督に見いだされて自己最多の67試合に登板し、4勝2敗39、ホールド、防御率1・51で最優秀中継ぎを獲得。「金本監督に抜てきしていただいて、自分の中では精いっぱいやったというのがあの年だった。自分の中でも上出来以上ですね」。手元で鋭く曲がる「真っスラ」を軸に打者を抑え込むスタイルは、同監督が元ヤンキースの守護神マリアノ・リベラのようだと称したほど。開幕当初に掛けられた「打たれても辛抱して使ってやる!」という言葉を胸に、ブルペンを支えた。

近年は肘、肩の痛みに苦しむことが多かった。今季は1軍で開幕を迎えたが、5月19日に出場選手登録を抹消された。引退を決意するきっかけは、8月28日に四国IL・徳島との2軍練習試合。救援登板して1回を3失点で「ほとんどまともに投げられなかった。もう、ダメだなと思って決断しました」と明かした。

光と影の経験は後輩たちの財産になる。会見の最後にはサプライズで岩崎が登場。花束を手渡され、桑原は「ぜひとも在籍中に優勝していただきたいなと思います」と、優勝に向けて突き進む後輩たちにエールを送った。最後まで全うしたいという思いから引退試合は固辞。24日からの2軍オリックス3連戦(甲子園)での登板が予定されている。【桝井聡】

◆桑原謙太朗(くわはら・けんたろう)1985年(昭60)10月29日、三重県生まれ。津田学園-奈良産大(現奈良学園大)を経て、07年大学・社会人ドラフト3巡目で横浜(現DeNA)入団。10年オフにオリックスへ、14年オフに阪神へ移籍。17年に自己最多の67試合に登板し、43ホールドポイントで最優秀中継ぎを受賞。今季は7試合で防御率9・00。通算242試合で15勝13敗、78ホールド、防御率3・61。184センチ、86キロ。右投げ右打ち。