遅れてきた左腕が、負けられない「伝統の一戦」で最高の投球を見せた。阪神高橋遥人投手(25)が6者連続を含む13奪三振の快投で、4年目でプロ初完封勝利を挙げた。プロ最多128球を投げ、被安打5で巨人打線を封じた。今季は上肢のコンディション不良で出遅れたが、9月上旬に復帰すると登板3試合で2勝目。三つどもえの優勝争いが続く中で、大きな白星をチームにもたらした。

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信じてくれた指揮官とともに、高橋は諦めなかった。最終回に最初で最後のピンチを迎えた。3点リードの9回1死満塁。丸から空振り三振を奪うと、小さくほえた。亀井の打球が右翼手のグラブに収まるのを確認すると、無邪気な笑顔を見せた。

「なんで最後こうなるのかなと思って投げてたんですけど、最後しっかり締められて、めちゃくちゃうれしかったです」

プロ最多128球を投げてつかんだ初の完封勝利。前夜に執念で同点に追いついたナインの思いを胸に秘めていた。「当たり前ですけど、みんな必死だった。それに乗って僕も、必死に勝利をつかみにいこうと思って投げられた」。2回2死から6者連続で奪うなど2戦連続2ケタとなる13奪三振。1球1球に魂を込めて、巨人のエース菅野と渡り合った。

誰もが天性の素材にほれ込む。2年前の9月上旬、広島戦でプロ最短タイの4回6失点で降板した。落ち込んでいた翌日、トレーナーとともに食事に誘ってくれたのが当時同僚の福留だった。「今まで会った左投手の中で5本の指に入る。だから、そんなに力を入れすぎなくてもいいんじゃないか?」。大リーグでもプレーし、話を聞いてみたいと思っていた大先輩からの言葉。経験豊富なベテランは完璧主義を見抜くと同時に、エース道を歩めるように背中を押してくれた。

上肢コンディション不良で今季は大きく出遅れたが、復帰2戦目の18日中日戦は大野雄に投げ勝って今季初勝利。この日の重要な一戦で先発に指名した矢野監督は最後まで信じていた。「『同点までは遥人に任せていいんじゃないかな』と思わせてくれた投球やった。マウンドに上がればいい意味で人が変わる。そういう気迫が出る。今日の打席でも」。

8回には自ら左前打を放ち、追加点の起点となった。出遅れた時間を取り戻そうと必死にプレーする。「僕は本当に遅れて来てるので、ここから少しでもチームに貢献出来るようにやるだけなので」。チーム4戦ぶりの白星は、3位巨人を3ゲーム差に突き放す大きな1勝。帰ってきた未来のエースが、救世主になった。【磯綾乃】

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▼26日に阪神○ヤクルト●のとき、阪神は首位に復帰する。なお、阪神○でヤクルト△、または阪神△でヤクルト●のとき、再びヤクルトは阪神にマイナス0・5差の首位となる。