すごい投手が虎に来るぞ! 阪神ドラフト3位の新潟医療福祉大・桐敷拓馬投手(22)が16日、関甲新学生リーグ史上初の完全試合を達成した。平成国際大とのリーグ第5節に先発し、打者27人、118球。自身の持つリーグ記録を更新する19三振を奪った。最速150キロ左腕が、11日のドラフト指名後の初登板で大快挙。こりゃ来シーズンが楽しみだ。

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桐敷は意識していた。「7回くらいからですね。チームのみんなも気を使って、全然声をかけてこなくて…」。失策も許されないドキドキの周囲をよそに、1人、雑念をかき消すかのように三振の山を築いた。「指名していただいて一区切りついたので、あとはチームのために投げるだけ。気持ちの面で吹っ切れていました」。阪神から3位指名を受け心のリミットを解除し、無限のポテンシャルを存分に発揮した。

8、9回は驚異の6連続奪三振フィニッシュ。球数100球が近づいてもなお、最速150キロの球威と変化球のキレは落ちなかった。「三振より最少失点でいかにいけるか考えていたんで、結果的にゼロに抑えることができてよかったです」。チームのために腕を振った副産物だと強調した。

昨年からブルペンで何度も右打者の膝元へ投げ込んできたスライダーがさえた。「今年から決め球としても使えるようになりました」。この日はスライダーで5奪三振。フォークも織り交ぜ、楽天牧田らプロを輩出してきた平成国際大につけ入る隙を与えなかった。

「球数が中盤に増えてしまったので修正していきたいです。今日は涼しく投げやすかったので、夏場にもこんな投球ができるように、スタミナをつけていきたい」。人生初の大記録にも課題を挙げる姿が頼もしい。目標の開幕1軍へ向け、即戦力左腕の触れ込みをこれでもかと証明した。

現状、阪神の左腕で先発ローテを任せるのは高橋、ルーキー伊藤将と手薄。この日、試合を見守った吉野担当スカウトは「先発も中継ぎもどちらでもいけるタイプ」と以前から評価している。ドラフト2位の創価大・鈴木も含め、虎の左腕王国形成へ期待がますます膨らむばかりだ。

「試合の中でも対応して、しっかりとゲームを作れる投手になりたいです」

全国でおよそ120人だけとされる珍しい「桐敷」姓が、1日で全国に知れ渡った。来年、タテジマでどんな快投を見せてくれるのか。ひと冬の楽しみが増えた。【中野椋】

桐敷拓馬(きりしき・たくま)

▼出身 1999年(平11)6月20日生まれ。埼玉県鴻巣市出身。

▼球歴 屈巣(くす)小1年時に屈巣ニュースターズで野球を始める。川里中時代は行田リトルシニアでプレー。本庄東では1年夏からベンチ入りし、同秋からエース。甲子園出場なし。新潟医療福祉大では1年秋にリーグ戦初登板。2年秋には延長10回参考ながらリーグタイ記録の18奪三振を記録。

▼球種 最速150キロの直球、スライダー、フォーク、チェンジアップ、ツーシーム。

▼珍姓 名字由来netによると、全国の「桐敷」姓はおよそ120人。「この名字で得したことはないですね…。これからも頑張って広まってほしい」

▼憧れ 現ソフトバンク工藤公康監督。「体を大きく使って勢いのある真っすぐを投げていたので、ああいう選手になりたい」

▼関西 明るい人が多いイメージを持つ。阪神のイメージは「甲子園とかファンの『黄色』というイメージが強いです」

▼サイズ 178センチ、90キロ。左投げ左打ち。

◆関甲新学生野球連盟 1993年(平5)に北関東甲信越リーグを改称し、現在は関東と甲信越にある国、公、私立20大学が所属。現在は1部8校、2部12校。上武大が最多の35回優勝を誇り、全日本大学野球選手権、明治神宮大会でも全国制覇1度ずつ。主な出身プロ野球選手は阪神大山悠輔(白鴎大)、島田海吏(上武大)、ヤクルト高梨裕稔(山学大)、楽天牧田和久(平成国際大)。今秋ドラフトでは中日1位でブライト健太(上武大)、西武6位で中山誠吾(白鴎大)、ソフトバンク育成13位で佐藤琢磨(新潟医療福祉大)が指名された。

 

◆完全試合 プロ野球では15人しか達成していない。直近は1994年(平6)の槙原寛己(巨人)で、平成ではこの1試合のみ。左腕で達成したのは1957年(昭32)の金田正一(国鉄)だけだ。なお、阪神の投手が記録したことはまだない。