パ・リーグはオリックスとロッテの白熱の優勝争いが続くが、球界の名物オーナーで知られるオリックス宮内義彦オーナー(86)も、25年ぶりの“そのとき”を心待ちにしている。95、96年の連覇のあと、ときには厳しく、不変の愛情を持ってチームを見守ってきた。折々のオーナー語録を振り返る第2回。2000年代はオリックスにとって激動の時代だった。チーム成績は下降し、毎年のように監督が交代する期に入った。宮内義彦オーナー(86)のコメントも、ときに厳しく、ときに皮肉まじりのものになった。

 

【2001年】▽4月1日 具台晟(ク・デソン)投手(当時31=韓国ハンファ)がロッテ戦でヨレヨレの来日初セーブを挙げた。3点リードの8回無死一塁から登板し、2イニングで4三振を奪ったものの、5四死球を乱発。なんとか無失点で切り抜け、今季2度目の観戦の宮内オーナーも「疲れた疲れた。三振か四球かなんてまるで少年野球のようだ。でも抑えたのだから、威力があるのだろうね」とハラハラしながら今後に期待した。

▽7月23日 4位ながら首位と4ゲーム差で折り返した3年契約の2年目の仰木監督の来季続投を示唆。「(監督の去就は)全く考えていない。考えたこともない。契約もまだ残っているし。僕はまだ優勝すると思っている」と巻き返しを熱望した。

▽8月3日 4連勝で3位に浮上し、首位近鉄に2・5ゲーム差とにじり寄った。近鉄との接戦を制し、観戦の宮内オーナーは「決戦、決戦」とご機嫌で球場をあとにした。

▽9月7日 仰木監督の来季去就が一転、白紙に。8月24日から勝率5割を割り、前年の4位を下回る可能性も出てきたこともあり、宮内オーナーが「ここまで成績が落ちたから、ご本人が(シーズンを)終わってみてどう思うか。(現在の成績は)僕自身、がっかりしている」と不振の責任を求める姿勢を示した。結局、仰木監督は同年で退任した。

▽10月4日 オーナー報告に訪れた仰木監督に対し、宮内オーナーは「いい監督に恵まれた。うちは監督の好きな選手を取ってくるのではなく、チームが考える範囲内(の補強)でやってもらった。それで2度の優勝、日本一は監督の力が極めて大きかったということ」とねぎらった。

【2002年】▽4月4日 石毛オリックスが開幕5連敗。日本ハムにサヨナラ負けして新人監督の開幕連敗ワースト記録に並び、シーズン初観戦の宮内オーナーは「しんどいね。(初回のセギノールと9回の進藤の)2つの失策で負けたね。(2番手の)山口は調子よかったが…。苦しいね」とつぶやいた。

▽7月1日 ロッテが敗れたため5位に浮上したものの、3連敗中のチームに対し「そりゃもちろん不満だよ。(シーズンは)まだ半分あるからね。前半戦は残り7試合? 全勝だ!」と奮起を促した。

▽8月19日 シーズンで初めてGS神戸で観戦も、覇気のないチームにあきれ顔。「借金20? 情けないね。しかし、こんなに弱くなるもんかね。どうしたのかな。みんな少しずつ打率を落としてるね」とガックリ。球団への要望については「勝つこと。最下位チームがあきらめたら、どうにもならない」とハッパをかけた。

▽9月6日 低迷するチーム状況を受け、宮内オーナーは朝の出勤前に「がっかりしている。チームは最下位だが、監督の前に社長が首になるんじゃないか」と岡添球団社長(当時)の解任示唆とも取れる発言を行った。その後、深夜自宅に戻り「今はまだシーズン中。人事についてモノを言う時期ではない。朝は口がすべったのかもしれない」と自らの発言を訂正したものの「今はビリで一番弱い。6位は面白くない」と苛立ちを隠さなかった。

▽同30日 前日29日のロッテ戦に負け、阪急時代の63年以来2度目、オリックスでは初の最下位が確定。来季の補強について問われた宮内オーナーは「補強でFA選手の獲得も必要? それは、僕の仕事じゃない」と球団に任せる考えを示した。

▽10月1日 岡添球団社長、石毛監督に来季の巻き返しを厳命した。「社長も監督もクビだと言いたいけど、来年は今年の悪夢を忘れるような成績を残して欲しい」と話した。同監督とは3年契約を結んでいるが「来年は分からない」と、成績によっては来季中に進退問題が浮上する可能性も示唆した。

▽同15日 シーズン終了の報告を行った石毛監督に対し、宮内オーナーは39年ぶり最下位からの「V字型回復」を厳命。「今年は大いに期待外れ。来年? V字型回復を期待してる。優勝? そういうこと。まあ運、不運があるけど優勝に絡むこと。少なくともそれは当然だ」。さらに、3年契約の1年目を終えた指揮官に「常にいろんな覚悟を持ってやらないといけない」と忠告した。

▽11月8日 外国人野手2人の補強成功を受けて「中軸がしっかりすれば、来年は優勝しかない」と優勝を厳命した。

【2003年】▽1月6日 オリックスグループの年頭会で、岡添球団社長に優勝を厳命。「今年は優勝しかない。アザワイズ(そうでなければ)社長はクビ!」と宣言した。

▽2月22日 春季宮古島キャンプを訪れ「今年目指すものは私が言う必要はない。Vという文字は1度トンと下まで落ちてから、トンと上がる。そういうシーズンにしてほしい」と、前年度最下位からの巻き返しに向けてナインを激励した。

▽3月6日 女子ゴルフ・ダイキンオーキッドレディスのプロアマに出場し、オフの裏話を暴露。「吉井、マックを獲って補強はうまくいけた。でも、本当は新庄も狙っていたんだ」と明かした。今季のチームには手応えを感じている様子で「昨季のようなことはない。V字回復です」と優勝を期待した。

▽同13日 オリックス 「オリックス激励パーティー」が神戸市内のホテルで行われ、オーナーは「(ファンとの)約束を果たせなかったら、オーナーをやめても仕方がない」とどっきり発言。終了後「あれは言葉のあやですが、今季のノルマは優勝、またはシーズン最後までの優勝争い。それがだめなら、私が断食道場に行くか禁酒会に入るかです」とV争いを熱望した。

▽同31日 オリックス シーズン初観戦で西武に完敗し、ため息。「重症ですな。昨年と同じになりそうですな」と、開幕6連敗から始まって最下位に終わった悪夢をよみがえらせた。

 

▽4月23日 成績不振で石毛監督を電撃解任。球団を通じて「今シーズンは、昨シーズンの最下位からの躍進を図るため、戦力を補強するなど球団を挙げて努力してまいりました。残念ながら開幕以降チーム成績は低迷、ファンの皆様のご期待を裏切ることとなってしまい、誠に申し訳ないという思いでいっぱいです。このたび、この不振から脱却するために、石毛監督に降板いただき、チームをいち早く立て直したいとの報告を球団より受け、承諾しました。石毛監督には昨シーズンの就任以来、若さと情熱を持ってチームを指揮していただきましたが、思うように結果が伴わず、今回苦渋の決断を迫られることになってしまいました。まだまだペナントレースは序盤戦です。我々は優勝をあきらめるわけにはいきません。この、チームの窮地に急きょ指揮を執っていただくことになったレオン新監督には早急にチームを立て直し、優勝争いに加わってペナントを盛り上げてくれることを期待しています」とコメントを発表した。

▽同29日 今季3度目の観戦に訪れ、レオン新体制を激励。「ポジティブな野球をやっているから、ファンも喜んでくれる。新しい野球を作ってくれると思う。勝ち負けは時の運」と高く評価した。

▽5月27日 あらためてレオン体制の支持を明らかにした。石毛監督から交代後も、チームは最下位のままだが「監督を代えて勝てるんだったら、どんどん代えるんですがね。やっぱり(問題は)投手ですかね。けが人がちょっと多いですね。今が一番つらいときでしょう。彼らが戻ってくるまでの辛抱ですね」と、現体制での巻き返しを期待した。

▽7月11日 オーナー会議出席後、レオン監督を来季も続投させる方針を明らかに。「来季監督を代えることは全く考えていない」と話した。

▽同24日 最下位ながら5カード連続勝ち越し中のチームに対し「投手が整備されたら勝てるんじゃないか。後半戦は勝ち越してもらわないと困る」と、後半戦勝ち越しの目標を掲げた。

▽8月7日 最下位に低迷するチームに対し「最下位濃厚? 何かいい案ない?」とお手上げ宣言。「今は不細工な試合を1つでも減らすこと。高校野球のトーナメント方式のように(1戦必勝で)やったほうがいい」と、あきらめ顔を見せた。

▽同13日 オリックス 日本ハム戦で「負け試合だったら早く帰る」と、怒りの観戦放棄。逆転された後の7回裏終了直後、予言通りに無言で東京ドームを後にした。前日は巨人渡辺オーナー(当時)が「オリックスは29点も取られて草野球か」と発言。それに対して「ノーコメントだ」と苦笑いしていたが、不甲斐ない試合で不快指数も増した? 

▽同17日 西武戦を観戦後、来季の監督問題を白紙に戻す方針を示した。それまでは続投を示唆してきたが「来年のことなんて全く考えていない。そんなことを言うとファンに対して申し訳ない。冗談じゃない。来季のことはシーズンが終わってから考える」と強い口調で言い切った。

▽10月17日 伊原新監督から就任あいさつを受け、その後そろって会見。「伊原監督は仰木さんと同じ道をたどって欲しい。仰木さんも近鉄の監督をされているときにリーグ優勝したが日本一に届かなかった。我がチームに来られてから日本一になった。伊原監督も同じ道を」と、96年にチームを日本一に導いた仰木元監督の名前を引き合いに出し、黄金時代復活を熱望した。

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