パ・リーグはオリックスとロッテの白熱の優勝争いが続くが、球界の名物オーナーで知られるオリックス宮内義彦オーナー(86)も、25年ぶりの“そのとき”を心待ちにしている。

95、96年の連覇のあと、ときには厳しく、不変の愛情を持ってチームを見守ってきた。折々のオーナー語録を振り返る第3回。2004年は、オリックスと近鉄との球団合併を軸に、球界激震の1年となった。夏に表面化した合併問題のあと、1リーグ制構想も明らかに。主役は宮内義彦オーナーだった。

【2004年】▽1月5日 オリックスグループの年頭式でドッキリ発言。「ブルーウエーブはグループ全体で担いでゆく大広告塔。関西のみなさんが頑張らないと朽ち果てた広告塔になる。まず開幕までにシーズンチケットを販売すること。例年にない大キャンペーンを張り頑張ってください。それなくしてはグループの広告塔としての役割を再考しなければならない」と身売りすらちらつかせた。その後、報道陣に対応し「ドッキリ発言? 少し脅さないと。あれくらい言わんとあかん。弱くなるとお客さんが入らなくなる。そうすれば(チームの)元気がなくなる。そしてまた弱くなる。この流れを断ち切らないとあかん。補強はした。あとはどれだけにぎやかにするか。観客動員のノルマ? プラス2ケタ(10%)以上!」と真意を説明した。

▽2月14日 春季宮古島キャンプを視察し「うちは隣の某球団のように10年、15年負け続けても応援してくれる基盤がない。最下位を3年続けるわけにはいかない」と、人気球団の阪神を皮肉りながらハッパをかけた。

▽3月11日 神戸市内での激励パーティで「一昨年、昨年と皆様に優勝を狙えると宣言してきましたが、最下位に終わりました…。仏の顔も3度までと申しますが、プレーオフとローレベルなことを言わず、今年こそ優勝を狙って戦えると信じています」と、中村GM、伊原監督の新体制への手応えを強調した。

▽4月24日 オリックス 今季2度目の観戦で、ロッテ戦で復活の好投を見せた川越に「しびれた! エース誕生だ!」と大喜び。「観戦試合は(今季)2戦2勝? それなら全試合来ないといけませんな。わっはっは」と高笑いした。

▽6月17日 6月に入って、近鉄との球団合併が浮上。オリックス側からもちかけたもので、オーナーは「一緒になるのならそれ以外の答えはない」と断言した。本拠地が兵庫、大阪の2府県にまたがることについても「例のないことといってもすべて例がないこと。それをやっちゃいかんのなら何もできない」と話した。同オーナーが、本拠地について見解を示すのは初めてだった。ただ兵庫・西宮市の甲子園を本拠地にする阪神が不快感を示したため、久万オーナーのもとを訪れ「あいさつが遅れて申し訳ない。(本拠地は)まだ2カ所にするのか、断定できない状態だが、最終的に(阪神には)迷惑をかけない」と説明した。

▽同18日 阪神久万オーナーとの会談後、合併が表面化したあと初めて近鉄戦を観戦。久万オーナーを訪問したことに関し「(合併問題が)メディアに出る前にごあいさつに行きたかった。(阪神の)近辺でこういう事態が起きたわけですから」と説明。将来は大阪、神戸のいずれかに本拠地を絞る考えについても「自分自身結論を出せる段階ではないし、球団としても出せる段階ではない」と語るにとどめた。試合はオリックスが快勝も「複雑な対戦になりましたね。まあ、私は野球が大好きなので邪念なしに見ることは出来ましたが」と明かした。

▽同19日 球団名問題について「ブルーウエーブにこだわりはあるか? もちろんある」と話した。

▽同21日  合併後の本拠地を大阪、神戸の2都市とする要望に対し、言葉を選びながら「近鉄ファンとオリックスファンにまことに申し訳ないことをしているわけです。両チームのファンに支援してもらえるチームを作っていくしかない。両チームファンがこれならやむなしといえるようなものを、何とかつくっていきたい。(7月7日の)オーナー会議前に阪神久万オーナーと会うか? 予定はありません。球界全体で話し合う問題ですから」と持論を展開した。

▽同27日 1リーグ制構想について初めて言及。「(各球団が1リーグ制の)流れであればね」とコメント。「ボクの個人的見解」と念を押したが、初めて1リーグ制支持の方向性を示した。さらに今後の球界について「野球界を変えるにはそれ(1リーグ制)だけではすまない。底辺を広げる必要がある。全体の中で、頂点は少なく、ハイクラスに……と。全体を考える中でやっていかないと…」と踏み込んだ発言も。

▽同30日 「ライブドア」の近鉄買収計画が浮上。オーナーは労組プロ野球選手会の顧問弁護士が計画の橋渡し役であると指摘した上で、選手会をまとめる立場のヤクルト古田会長を批判。この話は前から聞いておりました。実は選手の労働組合の顧問弁護士からの話なんですね。私としては大変筋が悪いと思っています。顧問弁護士がこういうことをして球界の健全化を阻害しようとしているという…。選手会とともに経営を脅かして、球界の危機を続けていくということを意図しているのか。古田選手会長は何を考えているのかな。そういう意味では終戦直後の労働組合のような感じがします。我々は新しい球界を作っていこうと前向きな努力をしている。たとえば元々のままでやったとしたら、また経営のしんどい会社が出てきて同じことが起こるわけだから。球界としてはこれは受け入れないと思います。せっかく40何年ぶりに再編の機会が訪れているわけで…」と説明。選手会側の動きをけん制しつつ「(近鉄との合併は)何ら変わりません。会社同士で決まったことなので。ビジネスの常識で考えて欲しい」と、近鉄との合併話が変わらないことを訴えた。

▽7月2日 具体的な球界再編構想を初めて披露した。これまで掲げた1リーグ制を発展させた形で、1軍だけでなく2軍も再編するというもの。「今まで影だった2軍を表に出して地方展開する。何年かの間にできれは…とボクは思っている。世界的に強い上(1軍)を作って、さらに底辺を広げていきたい。社会人とシームレス(継ぎ目がない)になるとどんどん広がっていくでしょう」と改革案を示した。

▽同9日 表面化した選手会のストライキ行使をけん制。「今どきそぐわないし、まさにこれはファンを無視した話。ファンがいないと(プロ野球は)成り立たない。(経営者側と選手側と)お互いにファンを少しでも納得させられるようにしなければならない」と呼びかけた。

▽同26日 オリックスと近鉄の合併が、両球団間で今週中にも正式調印されることになった。新球団名は「オリックス・バファローズ」が濃厚で、オーナーは「オリックスの名前は残る? それは会社としての大義名分が立たなくなるので残さないと」と明言した。

▽8月2日 球団合併に反対する労組プロ野球選手会が球団に送った警告文に対し「代案がないとね。反対、反対と言うだけでは建設的ではない」とコメント。12球団の赤字を解消する効果的な代案なしでは、話し合いに応じられないとの見解を示した。

▽同14日 近鉄との合併に関する基本的合意への調印が終わったが、野球に対する質問をシャットアウト。夏季休暇中を理由に「休み中に仕事は何もなし! コメントしない。1リーグ制が揺らぐ可能性? 休み中は野球のことは一切コメントしません」と宣言した。

▽9月8日  オーナー会議後の会見終盤、スト決行を決めた労組プロ野球選手会の動きを批判。「(各球団に)1番協力していただいたのが(合併によって)選手を路頭に迷わすことはしないということ。全選手を全チームがピックアップして雇用を維持するということを1番最初に決めました。それについて、選手会が統合を反対するというのは、労働組合としては非常に不思議なストライキだな、と。何を要求するのか。パ・リーグは徐々に観客動員が増えているが、経費、特に選手の参稼料(年俸)が急騰して経営が苦しくなっている。(合併を)1年延期するということは、1チーム数10億円の赤字が発生するんです。それを選手会が負担してくれるのか。代案のない一方的な申し入れです。労働条件についてはいくらでも話をさせていただく。ぜんぜん違うところでストといわれて戸惑っている。一番迷惑をこうむるのはファンではないのか」と語った。

▽同25日 米ワシントン州シアトルで取材に応じ、球団が黒字になれば、オリックスの名前を球団名から外す考えを示した。「広告宣伝ならいくら赤字でも構わないという考えでは、経営の合理化や改革はできない。わが社としては、これが克服できて黒字になりさえすれば『オリックス』の名前を球団名から外し、黒字分は社会奉仕活動や野球振興費に回しても良いとも思っている」と語った。

▽同28日 合併球団の監督就任を要請している仰木彬氏(当時69)に大きな期待を寄せた。「ご覧の通り、球団統合という事態。そのトップとしてもう1回、頑張っていただきたい。最適な方だと思っています」と話した。

▽12月22日 合併球団入りを拒否した近鉄のエース岩隈に対し「新球団の発足にあたっては、まず前向きなチームづくりをし、できるだけ多くのファンのみなさまに門出を祝っていただくのが最も重要だと考えています。したがって、これまでの経緯もありますが、岩隈選手の東北楽天ゴールデンイーグルスとの金銭トレードを承認しました」と楽天入りを認めた。

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