ミスターに野球界初の新たな勲章が贈られた。今年の文化勲章が26日、発表され、スポーツ振興で巨人長嶋茂雄終身名誉監督(85)ら9人が選ばれた。スポーツ界からの選出は、水泳の故古橋広之進さんに続いて2人目。巨人時代は戦後の高度成長期の国民的スーパースターとして活躍し、引退後は巨人や日本代表で監督を務めた。今夏の東京五輪では開会式の聖火ランナーを務めるなど、野球界だけでなくスポーツ界の発展に貢献してきたミスターが、これからも日本をスポーツで盛り上げ続ける。

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野球界初の選出の知らせを受けた長嶋氏の第一声は「感謝」だった。椅子に腰を下ろし、無数のカメラのフラッシュを浴びながら「皆さんのおかけでもらったということは、非常にうれしい気持ちです」とほおを緩めた。スポーツ界では故古橋広之進さん以来2人目で、野球界では初の快挙になる。「古橋さんは僕も会ったことがあり、うれしい気持ちを思い出しましたけど、僕の場合は野球界で初めての受章になったということなので何とも言えない気持ちでいっぱいです」とさらに目尻を下げた。

日本国民に力を、希望を、笑顔を届け続けてきた。巨人時代には「ミスター」の愛称で親しまれ、868本塁打の世界記録を持つ王貞治氏と「ON」として65~73年の巨人の9連覇に貢献。野球を国民的人気のスポーツにする一翼を担った。現役引退後は巨人とアテネ五輪日本代表の監督を務め、指揮官としても野球界を大いに盛り上げた。

病にも屈しなかった。04年のアテネ五輪直前に脳梗塞を患い、本戦では指揮を執ることができなかった。今も右半身にはまひが残るが懸命なリハビリを継続し、13年には愛弟子の松井秀喜氏とともに国民栄誉賞を受賞。今夏の東京五輪では王氏と松井氏とともに開会式の聖火リレー走者を務め、大きな感動を生んだ。「スポーツの祭典が2度、日本でやったということは素晴らしいことだと思いました。何とも言えない気持ちでいっぱいでありました」と、自らの功績よりもスポーツ界の発展を喜ぶところが、ミスターと呼ばれるゆえんでもある。

今年は巨人の試合観戦だけでなく、練習を視察して打撃の直接指導をするなど、まだまだ精力的だ。「野球というものはやっぱり何とも言えないスポーツだと思っています。いろんなスポーツがありますが、そういう違いがあるからこそチャンスが生まれ、また皆さんが一生懸命やるようになる。野球界のみならず、日本のスポーツも全般的に盛り上がっていけばいいと思います。貢献よりも、一生懸命スポーツをやっている人たちがいるわけだから、もっともっと良い方向に持っていけるようにやれば良いと思います」。ミスターのスポーツ界への情熱は、今もなお燃え盛っている。