ヤクルトのベテラン青木宣親外野手(39)の匠(たくみ)の技が、CSファイナルステージ初戦で光った。

初回、先頭の塩見泰隆外野手(28)が二塁打を放ち、2番青木に打席が回ってきた。2ボールで迎えた3球目、いきなりバントの構えを見せて相手を揺さぶった。カウント2-2となり、巨人先発山口俊投手(34)の5球目、見逃せばボールとなりそうな外角の131キロフォークに大きく踏み込んでバットに当て、引っ張って投ゴロとした。二塁走者の塩見は三塁へ。狙い通りの進塁打になった青木は、笑顔でベンチへ戻った。出迎えた嶋も川端もコーチ陣も、チームのためにアウトとなったベテランを拍手でたたえていた。

そして1死一、三塁となり、村上宗隆内野手(21)の遊飛で三塁走者の塩見がタッチアップし生還。青木の投ゴロは、見事に先制点につながった。

適時打を狙いたくなる場面だが、最低限の仕事に徹した。記録上は「投ゴロ」。しかしその一打には走者を進塁させたい、先制点を奪いたい、勝ちたいという思いが詰まっていた。高津臣吾監督(52)の「今まで通りのつなぐ野球をやっていければ」という思いを、体現した。

打線がつながって先制点を奪い、2年目の奥川恭伸投手(20)が初の完封。投打も、ベテランも若手もかみ合って、大事な初戦を勝利で飾った。高津監督が「明日どういうゲームになるか分からないですけど、今日のゲームがあったから、明日こういうゲームになりました、勝つか負けるか分からないですけども、やっぱり先にいい形で1勝できたというところは、明日に続けていかないと」と評した1勝。日本一へと続く道で、ベテランの一打とともに大きな1歩を踏み出した。【保坂恭子】