会心の一撃だった。3年目20歳のオリックス太田椋内野手が、一振りで崖っぷちのチームを救った。2-2で迎えた7回1死二塁。ヤクルト3番手石山の137キロスライダーに食らいつき、前進守備の右中間を破った。二塁走者の紅林弘太郎が生還し、太田は一気に三塁へ到達。ベンチへ向かって、ひときわ激しく右拳を突き上げた。

太田 次につなぐ(思い)。今日初めてのスタメンだったので、緊張もありながらワクワクもしながら、良い打席が送れたと思います。シーズン中の方が緊張した。ワクワクしてやれました。

日本シリーズ第4戦までの全試合に先発した安達がベンチ外。8番二塁で太田に出番が回ってきた。CSファイナルステージのロッテ戦は、1試合に代走で出場したのみ。もちろんポストシーズンは初スタメンだ。「与えられた立場で、ベストを尽くせるように準備していこうと思っていました」。温め続けたベンチで研究してきた成果を、負けられない戦いで発揮した。

高卒3年目の今年は開幕スタメンでエラー。「夢の中でもエラーする自分を見ました…」。チャンスをつかめず、5月に2軍落ちした。だがファームでやり直し、9月中旬に再昇格。「大きくきれいな弾道を意識したスイングで、振り幅を短く、インパクトを強く」。背番号31を継承した小谷野野手総合コーチと二人三脚で練習に取り組み、1軍に帰ってきた。

7回の一時勝ち越しは19歳の先頭紅林が安打で出て、20歳の太田がかえした。中嶋監督は「若い2人で1点取って、チームに勢いを作ってくれましたし、勇気を与えてくれた」と絶賛。太田も後輩紅林の活躍に「本当に成長していますし、しっかりチームに貢献しているので、僕も貢献できるように」と切磋琢磨(せっさたくま)で進化中だ。

第6戦は神戸に舞台を移す。「3連敗していましたが、しっかりと良い雰囲気でできている。まずは明後日(27日)につなげられてよかった」。若武者が神戸での日本一に備えて、牙を研ぐ。【林亮佑】

【関連記事】Aジョーンズ決勝弾!オリックス勝って神戸へ/日本シリーズ第5戦詳細―>