オリックスの25年ぶりリーグ優勝を記念した全9回のスペシャル企画「火曜B」の最終回は、伏見寅威捕手(31)の奮闘に迫ります。昨季はレギュラーシーズンで自己最多91試合に出場し、捕逸0。悔いが残るのはヤクルトとの日本シリーズ第6戦。延長12回にシーズン最初で最後の捕逸…。今オフはそのシーンも頭の中で整理し、日本一をつかむための鍛錬を続けています。【取材・構成=真柴健】

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温和な笑みが一瞬、消えうせた。1月中旬、大阪・舞洲で自主トレを終えた伏見はポツリとつぶやいた。 「悔しいよね、最後の最後に。こうやって振り返ってみると、自分に隙があったんだなと。もちろん、その時は必死なんだけど」

グラウンドの土をトンボでならすと、腰に両手をやった。「全体を見て、全てを状況判断する。あれは一瞬の反応が遅れてしまったミスだった」。そう言うと、センター後方の電光掲示板を見つめ続けた。

“あれ”とは…。昨年11月27日の日本シリーズ第6戦。同点の延長12回2死一塁で、代打川端を迎えた場面だった。カウント2-2から5球目、吉田凌が投じたスライダーはベース手前でバウンドし、伏見が後ろにそらした。一塁走者に二進を許し、結果的にこれが勝ち越し点につながりヤクルトの日本一が決まった。

レギュラーシーズンで自己最多の91試合に出場し、規定試合数(捕手はチーム試合数の半分)到達者では12球団で唯一、捕逸0だった。それが、最終回で出た。「カウントを追い込んだ瞬間に盗塁もあるなと思った。(一塁走者が)塩見だったのもある。そっち(盗塁)に意識があったのは確か」。状況判断がほんの少しズレた。マウンドの吉田凌は制球力とキレのあるスライダーが武器で「ワンバウンドの確率は低い。自分の中で考えた割合が、ワンバウンドよりスチールになってしまった」。一連の判断遅れがたった1つの“失策”につながったと、伏見は自己分析している。

そして、その受け止め方に今季に懸ける思いが詰まっていた。

「(昨季は)年間を通して出来た部分は多い。だから、自信をなくすことだけはしないように心掛けている。もちろん、ミスした事実は受け止めている。オフシーズンでもっと強くなってやろうと思っています」

現在は大阪・舞洲の球団施設をフル活用。捕手の基本プレーであるキャッチングやブロッキングで課題克服に努める。「とんでもない暴投とか、かなりベース手前のワンバウンド以外は捕手が止めないといけないのが前提。シンプルだけど、捕手は捕ること、止めること、進塁を防ぐことが大事」と徹底する。

連覇&日本一を狙い、100試合以上出場を目標に掲げる。「今年は最後の最後に笑っていたいよね」。頂点の景色を知るために、地道な練習に明け暮れている。