<オープン戦:阪神7-3広島>◇5日◇京セラドーム

 いよいよリミッター解除なのか。阪神の新外国人ルー・フォード外野手(31)が5日、広島とのオープン戦で来日初アーチを放った。7番右翼で先発出場。2-3と1点を追う4回1死一塁の場面で値千金の逆転1号2ランを左翼にぶち込んだ。推定140メートルの巨大弾でパワーを見せ、右翼争いの主役強奪を狙う。

 左翼上段に伸び行く打球をニラみつけた。フォードが存在価値を証明して見せた。推定140メートルの巨大弾を振り返り、新助っ人は背中をかきながら照れた。

 「サンキュー!

 真っ直ぐが真ん中にきて、自分でも手応えがあったよ」。

 1点を追う4回1死一塁。カウント2-1と追い込まれたところで集中力がマックスに達した。内寄りに甘く入った広島長谷川の142キロ直球を完ぺきにミート。白球を左翼3階席の前部にぶち当てた。来日初アーチとなる決勝2ラン。空振り三振に倒れた1打席目を忘れさせる、価値あるひと振りだ。

 右翼争いの相手は桜井、葛城など強敵がひしめく。助っ人とは言え特別扱いはない。レギュラーを奪い取らなければならない立場。球団関係者から教えられ、現状は理解している。この日は2月20日紅白戦以来となる右翼の守備も志願。打って守れる姿をアピールした。

 発奮材料もある。前日4日、家族が来日した。神戸市内の自宅でコーリー夫人、長男ジェイク君、二男ジョーダン君と水入らずの時間を過ごした。愛するファミリーの前では強いパパでいたい。新しいエネルギーを手に入れた。燃える闘志を胸に秘め、自然体でポジション獲りを狙う。

 「(右翼を争う)3人がいるけど、みんな打ってくれるのが、チームにとっては良いことなんだ。自分もその中の1人に入れるようにしたい」

 1日のオリックス戦では来日初のタイムリー。「評価も何も、まだ何も見せてもらっていない」。過労、右ひざ痛で別メニュー調整を続け、岡田監督から早くも最後通告を受けていた男が、徐々にギアチェンジを始めた。ライバルたちの目の前で、豪快な1発をぶち込んだ。これで実戦6試合で11打数5安打、3打点。確かに結果を残している。

 「(試合前の)フリー打撃を見とったらええ感じやった。キャンプから比べたら、だいぶ振れるようになった。危機感じゃないけど、いつまでも『疲れた』って言うてられん。それが分かってきたんやろ」。実力に「?」マークを付けていた指揮官も及第点を付けた。フォードが上昇気流に乗ってきた。【佐井陽介】