巨人上原浩治投手(33)が7日、来季大リーグでプレーする意向を示した。川崎市のジャイアンツ球場で会見を行い、4日に初めて取得したフリーエージェント(FA)権の行使について明言を避けたが「海外でやりたいということを目標として10年間やってきた。入団したときから、全く変わっていない」と話した。事実上の大リーグ挑戦を宣言した。8日は横浜戦(横浜)に先発予定で、自身の去就を今後一切封印し、日本一奪回へ向けシーズンに集中する。

 上原は胸を張って、自分の言葉で決意を語った。「常に目標を上に置かないと、自分が向上していかない。海外でやりたいという目標がある。入団したときから10年間、気持ちが切れずにいて。良く10年持ったなぁ、というのがある」。大リーグでプレーする。球団選択の自由が確約されるFA権を得た。節目を機に、ずっとより所にしてきた胸中を明かした。

 チームと日本球界全体に配慮し、試合のないこの日まで口を開くことを待った。同時に「今は考えることができない」「シーズンが終わってから」などと、けじめをつけずあいまいな言葉で思いを包み隠すことだけは本意でなかった。「うそをつくことはできないから」と上原は言った。「チームはチーム、自分は自分。割り切って考える。日本一になりたい。1年間ちゃんとやることが、今の目標だから。こういう話は、今日で終わりにする」。異例ともいえるシーズン中、練習後のFA取得会見。野球人・上原の思いやりと「逃げも隠れもしない」という男としての信条が背景にあった。

 98年にエンゼルスと巨人、最後の最後まで悩み抜いて、巨人を逆指名した。五輪、WBCと日の丸を背負い、国際試合で無敗。経験を重ね、日本人選手が次々と海を渡る姿を目の当りにするたび、心に揺るぎがないことを確認し、自信は深まっていった。「当時と違い、今は遠い存在ではない。黒田さん(前広島)みたいな人が活躍していると、余計身近に思う。先発、抑え両方できることを証明したい。選択肢が広がるし、先発にこだわりはない」。遠回り、などとは思っていない。野球界の環境の変化と自分が積み重ねた実績が追い風になると信じている。

 誠実に野球に向き合うことができた10年間。無事権利を得た今、巨人への感謝の思いは大きい。「ケガをたくさんしてしまって。迷惑を掛けたトレーナーの方に感謝します。巨人に入って、10年やれたからこそ今がある。巨人じゃなかったら、こうはなっていない」と言葉を並べた。会見の最後は「これでシーズンに集中できる。しゃべることによって、スッキリしたというのがある。まだ退団するわけじゃないんだからね」と笑って締めた。

 今後、故障などのアクシデントで思いと現実が異なる可能性はある。だがFA権を得た事実と、メジャーでプレーしたいという今の気持ちに偽りはない。原監督を胴上げしてからもう1度、この日のように胸を張って会見する。【宮下敬至】