<日本ハム1-0楽天>◇10日◇札幌ドーム

 たった1安打のヒーローが、陳謝を連発した。決勝のホームを踏んだ、ひちょりが頭を下げまくった。「いつも、いつも(ダルビッシュ)有に申し訳ない。野球選手として物足りない」。すっきりのエースとは正反対に、笑顔はなし。「生きた心地がしなかった」という梨田監督に笑顔をプレゼントしたが、鉄仮面は崩れなかった。

 難攻不落のエース攻略プランの道筋を作った。先頭打者の7回。ほぼ真ん中のシュートを詰まりながらも中前へ運んだ。高いバウンドで岩隈の頭の上を抜き、チーム初安打。犠打と2四球で満塁へとチャンスは広がった。「極貧打線」の得点パターンの起点になり、スレッジの犠飛で生還し、均衡を破った。

 試合前の野手ミーティングでの指示は「ワンチャンスしかない」。あとは簡単に、岩隈-藤井バッテリーの配球パターンを確認しただけとシンプルだった。個々の力での打破を求められ、その最初のチャンスを、おぜん立てした。だが8回の1死一、二塁、一打出れば追加点の場面では二併。打っていれば「劇団ひちょり」の真骨頂の押せ押せムード、決定打になっただけに「すべて実力不足」と顔をしかめた。

 ビジネスライクに裏方スタッフと付き合う選手が増えてきた昨今で、自ら誘って食事をごちそうする回数はチームNO・1。試合後には打席の映像を見直し、おさらいも忘れない。明るいキャラクターの裏にある、古風なもう1つの顔を最後までのぞかせて猛省した。「有が頑張っていたのに…」。試合後はウエートトレへ直行した。会心の仕事を完遂するまで、ひちょりは、おごらない。【高山通史】