<ソフトバンク1-6ロッテ>◇26日◇ヤフードーム

 平成生まれでの白星一番乗りは「ビッグ3」の1人、ロッテ唐川侑己投手(18)だった。26日、ソフトバンク8回戦(福岡ヤフードーム)で鮮烈の初登板、初勝利を飾った。7回を3安打5奪三振1四球の無失点、三塁を踏ませない堂々たる投球だった。物おじしない高卒ルーキーは大場翔太投手(22)とのルーキー対決も制し、チームは5連勝で首位西武を0・5差でピタリ追走している。

 バレンタイン監督のハイテンションがすべてを物語っていた。唐川と並んで写真撮影に応じると、ヒーロー以上の笑顔で「1勝」を示すように人さし指を立ててはしゃいだ。クールな18歳の投じた92球が、ベテラン監督を熱くさせた。

 立ち上がりから圧巻の投球だった。初回先頭の川崎を内角に食い込むスライダーで空振り三振に仕留めると、2番仲沢にはカウント2-1から変化球のサインに首を振り、直球で空振り三振。並の新人ならのみこまれてしまいそうな初回でも、冷静に捕手のサインに首を振った。「投手有利のカウントだったのでストレートでピシャッと抑えれば乗っていけると思った」。その言葉通り、4番松中も空振り三振に仕留め、初回のアウトをすべて三振で奪った。

 ゆったり足を上げたフォームから、リリースポイントで腕を素早く振り抜く。そのギャップで腕が遅れて出てくるように見えるため、打者はより速く感じる。最速145キロ直球に生命線のスライダー。105キロ前後のカーブを織り交ぜて、7回をわずか3安打無失点に抑えた。

 この日の昼食。同期入団で福岡出身の伊藤とラーメン店へ出掛けた。伊藤が「いつも通りに投げれば大丈夫」と話したが、唐川は「はい」と緊張した様子もなく答え、ラーメン、ギョーザ、ライスをペロリと平らげたという。好きな言葉は「泰然自若」。ビッグ3の中では唯一、キャンプ2軍スタートと出遅れた感もあったが、本人は全く気にしていなかった。

 大器晩成型を見越した成田高・尾島監督の指導も実った。在校中は「器用なことはしなくていい」と言い聞かせ、球種を増やすより球の質を上げることに専念させた。しなやかなフォームをつくり上げ、直球とスライダーだけを投げさせた。基礎が出来上がっていたため、プロ入り後はスポンジが水を吸収するようにけん制、クイック、新球をマスターした。荘2軍投手コーチは「チェンジアップを1週間で自分のものにしてしまった」と驚きを隠せなかった。

 底知れないポテンシャルを秘めたニューヒーロー。次回登板は5月3日の西武戦が有力だ。「ドーム球場は結構おもしろかった。でも千葉マリンなら家族や友達も見に来られるので、次も勝ちたいです」と、涼しい顔で言ってのけた。「松坂2世」でも「ダルビッシュ2世」でもない。平成生まれで初勝利をつかんだ唐川が新たな伝説を作る。【鳥谷越直子】