<阪神1-4ヤクルト>◇29日◇甲子園

 阪神が“左腕貧打症”にかかった。快晴の祝日。甲子園には4万3504人の大観衆が詰めかけたが、試合内容は寒かった。ミスで失点し、ヤクルト先発の左腕石川に8回1点と抑えられ完敗した。甲子園開幕からのノーアーチは2リーグ分立後ワーストの8試合まで伸びたが、それ以上に気がかりが左腕対策。この日も5番にはルー・フォード外野手(31)が起用されたが無安打に終わった。「右打者の5番」の不振が、打線全体に影響を及ぼしている。まだ貯金11の首位だが「左腕対策」は急務だ。

 ボールゾーンへ逃げていくスライダーに、金本のバットは空を切った。1回1死一、二塁の絶好機で4番が喫した空振り三振が、この日の苦戦を暗示した。フォードが四球を選んだが鳥谷が左飛でチェンジ。最初のチャンスを逃した打線は、左腕石川に8回まで5安打1点に抑え込まれた。

 「1、2番が左だし、金本のところがポイントになってくる打線。左腕に抑えられるのは、そういうところかな。ただ考えたら、打率とかは左でも悪くない。どっちにしろ1年間、対戦する相手だからな」

 好調の陰でじわり浮上してきた「左腕貧打症」は、岡田監督も感じ取っていた。19日ヤクルト戦では若い村中に白星を献上。ナゴヤドームでは負けてこそいないが、左腕先発の川井とチェンに手をこまねいた。劇的サヨナラ勝ちの27日巨人戦も、先発内海には6回1得点。中継ぎ陣も含めサウスポーから思うように得点が奪えない。

 「カネも悪いときにはボールを振って崩れかかるよな。自分で決めないと、というのがあるのだろうけど」と岡田監督は指摘した。金本が決めにかかるのも、5番にどっしり座るはずの右打者が固定できないからだ。この日も5番で先発したフォードは内野ゴロ2つ。途中出場の今岡は三振に二ゴロと快音は出なかった。左腕攻略には欠かせない右のスラッガーが眠ったままなのが、打線全体に影響している。

 相手をかき回していた赤星まで4打席凡退で、18試合ぶりに1度も出塁できなかった。「じっくり見て結果が出る試合もあるけど、きょうはもっと積極的にいかないといけなかった」。制球よく追い込む石川のペースにはまり、突破口を開けなかった。3回に豪快に引っ張った打球が右翼フェンス手前で失速した金本は「(浜)風があるのは分かっていること。お互いさま。ガイエルも(惜しい当たりが)あった」と顔をしかめた。

 これで本拠地甲子園でのノーアーチが開幕から8試合となり2リーグ分立後のワースト記録を更新。頼みの綱の「つながり」もサウスポーには分断される。嫌な打線沈黙パターンを抱えてしまった。【町田達彦】