<西武4-3日本ハム>◇7日◇西武ドーム

 ミラクル西武が2試合連続サヨナラ勝ちを決めた。同点の9回2死満塁から、片岡易之内野手(25)がサヨナラ打を放って、日本ハム・ダルビッシュ有投手(21)に今季初黒星をつけた。早くも今季5度目のサヨナラ勝ちで、興奮しすぎた大久保博元打撃コーチ(41)が右太もも裏の肉離れを起こしてしまうほどのお祭り騒ぎ。首位決戦で3連勝して2位日本ハムに5ゲーム差をつけ、独走態勢に入った。

 興奮はまさに絶頂だった。サヨナラ打を放った片岡めがけて駆け寄る西武ナイン。輪に加わろうとした大久保打撃コーチにアクシデントが起こった。歓声が鳴りやまないなか、もん絶の表情を浮かべながら、ブラゼルや細川らにかつがれて退場。「右太もも裏の肉離れ、左足もつった状態」と108キロの巨体を支えきれなかった。ダルビッシュ攻略の興奮が、前代未聞のコーチ負傷退場を招いた。

 グラウンドの熱狂も冷めやらない。ヒーローの片岡は、ムービースターになりきった。スパイダーマンのマスクをかぶり、一塁側ベンチの屋根に駆け上がり、右翼フェンスの金網にもよじ登った。開幕から用意していたマスクはディスカウントストア「ドン・キホーテ」で9000円で購入。パフォーマンス後は、息を切らしてすぐに話せないほどの全力パフォーマンスで、ファンを喜ばせた。

 ダルビッシュ攻略には理由があった。9回2死満塁、147キロをたたきつけた片岡の打球は高く弾んで、三塁手の頭上を越えた。この日3安打を放ち「僕の時は真っすぐが多かった。前の打席よりはボールが来てなかった」と直球を狙いすました。春季キャンプで、大久保コーチが「仮想ダル・マシン」を考案。打撃マシンに対し、12メートルまで近づいて徹底的に打ち込んだ。「130キロのボールが体感だと170キロに感じる。体で覚えておかないとダルの球も打てるはずがない」と同コーチ。速球への“免疫”ができた中村、細川にも1発が飛び出し、劇的な逆転勝利につながった。

 熱いゲキも効いた。8回の攻撃前、渡辺監督がベンチ前にナインを集め「今のダルビッシュを打ち崩せるのは、うちの打線しかない」と暗示をかけ、若いチームを1つにした。「この勝利は大きい。9連戦を最高の形で締めくくれた」と7勝2敗で走り抜けた。首位決戦の日本ハム3連戦は6点差の大逆転に、2試合連続のサヨナラ勝ちでは、大久保コーチが興奮するのも無理はない。無敗のダルビッシュをも止めてしまう勢いと強さが、今の西武にはある。【柴田猛夫】