<巨人4-5阪神>◇7日◇東京ドーム

 さすが鉄人だ!

 阪神金本知憲外野手(40)が巨人戦(東京ドーム)で通算400号に王手をかけた。3回に巨人木佐貫から後頭部に死球を受けヒヤッとさせたが、6回の次打席で通算399本塁打となる5号ソロを右翼席へ運んだ。03年の阪神移籍以来、金本の死球直後の打席は13打数6安打で打率4割6分2厘と驚異的で、鉄人の本領を発揮した。阪神は3連勝で貯金を今季最多の14とした。

 恐怖心は、立ち上がった瞬間に消し去った。金本が常識では考えられない、まさに「鉄人」の本領を発揮した。6回1死走者なし。門倉から右翼席へ今季5号ソロを運んだ。一時は点差を2に広げ、勝利に貢献する大きな1発だった。

 3回の打席だった。木佐貫が4球目に投じた速球が後頭部を直撃。首をすくめ逃げようとしたが、間に合わなかった。頭を抱えたまま倒れ込んで、東京ドームが凍りついた。前日まで連続試合全イニング出場を1218とし、足かけ10年にわたる記録が途切れるか、と思わせるほどの衝撃だった。三塁側ベンチに戻りアイシング治療を受けると、35番の坂のヘルメットを借りて再びグラウンドに戻った。

 金本

 モロやったな。ずっと意識はあったけど、立ち上がるのは怖かった。急に立つとフラッとするからな、経験上。木佐貫は威嚇したわけでも故意でもない。オレは何でもない。大丈夫だから。

 試合後は相手の木佐貫を気遣った。タクシーで都内の病院に直行し、検査した結果、幸いにも骨には異常なく、「左後頭部打撲」だった。頭部死球は05年6月2日、ソフトバンク三瀬から受けて以来だが、金本のすごさは死球直後の打席にある。阪神移籍以来、この試合の1発を含め、13打数6安打で打率4割6分2厘は驚異的だ。多くの打者は死球後遺症で腰が引ける傾向があるが、金本は逆に外角球に踏み込んで対応した。

 岡田監督は「展開的にも(金本は本塁打を)狙っていたんじゃないか。後の投手は厳しい内角もつけないだろうし。ベテランの読みと、やはり気持ちだろうな」と感服した。8回にも1死一塁から左前打でチャンスを広げ、決勝の右前適時打を放った葛城に珍しくガッツポーズした。

 「もともと万全じゃない。でも覚悟して開幕しているんだから」。この日の試合前にそう話していた。オフに左ひざを手術した影響は、開幕から1カ月がすぎて体のあちこちに出ているという。ただ弱音を吐くどころか、グラウンドに立てば誰よりも頼りになる主砲だ。通算400本塁打に王手をかけた1発。そんな数字以上に、アニキのすごみが詰まったひと振りだった。【町田達彦】