<日本ハム0-1ソフトバンク>◇10日◇函館

 ソフトバンク杉内俊哉投手(27)が日本ハム戦で今季初、通算2度目の無四球完封で3勝目を飾った。味方の援護は初回に内野ゴロの間に挙げた1点のみ。6回2死に左ふくらはぎがつるアクシデントを乗り越え、9回散発4安打の力投を演じた。前回は杉内の登板からチームは5連勝を決めた。交流戦まで残り7試合。左のエースが再び連勝街道を予感させる快投を演じた。

 もう息を吹きかけ、指先を温める必要はなかった。気温9度の函館の冷風がちょうどいい。杉内の体と心は「沸騰」していた。9回2死一塁。カウント2-0と追い込んだ4番稲葉に、すべてスライダーの3球勝負を仕掛けた。外角へ逃げる軌道で空を切らせると、左腕でガッツポーズ。体を反転して、もう1度。普段はクールな男が死守し続けたマウンドで大はしゃぎした。

 「1-0で、しびれるゲームでした。最近は打線に助けてもらっていたので、接戦をものにできてよかった」。インタビューを終えたヒーローは「今日はムッチャ暑かったぁ~」と額の汗をぬぐった。指先の血行障害に悩まされ、低気温の屋外球場は不利と目されたが、難易度の高い1-0完封でそのレッテルを外した。屋外デーゲームは通算9試合で4勝1敗。もう8試合、6年間も土はついていない。

 ゆったりとしたフォームから生まれる切れのある直球が代名詞の杉内が、変化球を多投した。チェンジアップとカーブ、スライダーで面白いように空振りを誘った。内野への打球は13個。うち9個を変化球で打ち取った。「風が強いから引っ張っても長打がない。右打者の本塁打はないと、大胆にいけたかな」と、左翼から右翼へ強く吹く風を計算。右打者6人を並べたハム打線を、ちょっぴり軟投派にシフトして料理した。

 函館市内の最低気温は1・5度。ズボンの左後ろポケットに入れたカイロに何度も手をやり、イニング間は暖房の効いたロッカー室で筋肉を温め続けた。6回2死、田中への3球目で「クセ」という左ふくらはぎがつった。血相を変えて杉本投手コーチがベンチを飛び出したが「大丈夫です」とマウンドを死守。9回4安打無四球での完封、今季3勝目へと突っ走った。

 昨年は股(こ)関節の痛みに悩まされたが、クロスしていたステップを戻すことで負担を軽減。「つい投げすぎる」というブルペン投球を時には30球前後まで減らす一方、キャッチボールを増やしながら、消耗品の肩を管理する。夫人がつくる「野菜、鶏肉を中心としたスープがいい」と話し、食卓からのサポートを受ける意識も高い。エース斉藤が米国リハビリで不在。海の向こうから「内容は秘密」という携帯メールを受け取る杉内は、人一倍責任を感じて投げている。

 前日9日、投手陣に「12回完投指令」を出した王監督も、杉内の“一発快投”にうなるしかない。「足もつった中、最後までよく粘った。昨日完封してくれと言って、今日みたいな試合は先発がガツッとやってくれないと。本人が自信を持って投げたのが大きい。何といっても彼中心で動いているんだから」。6日楽天戦まで続いた5連勝は杉内から起点だった。それから中3日、再び連勝スイッチ点灯を思わせるエースの勇姿だった。【押谷謙爾】