<日本ハム4-3ロッテ>◇14日◇東京ドーム

 びしょ濡れのヒーローがお立ち台で叫んだ。「みんなの気持ちが1つになった結果が、こういう形になりました」。3本の安打と相手のミスで2点差を追いついた延長11回1死一、三塁。仲間の思いを乗せた高橋の打球は、左翼への大きなサヨナラ犠飛となった。「前の人たちが必死になってつないでいる姿を感じた。苦しいときに、みんなで大事な1勝を得ることができた」。負ければ4月5日以来の借金生活突入という危機を、一丸となってがけっぷちで踏みとどまった。

 試合を決める自信はあった。打席へ向かう脳裏に、ある光景がよみがえっていた。3月27日西武戦。延長10回1死満塁で涌井からプロ入り初のサヨナラ打を放った。あのときも先発はダルビッシュだった。「意識はありました。前にもこういうシチュエーションあったなぁって」。前回同様エースに白星をつけることはできなかったが、価値ある勝利を引き寄せた。

 殊勲打を放った働きの裏で、体は満身創痍(そうい)の状態だ。4月27日楽天戦で右大胸筋を痛めた。故障後は痛み止めの注射を直訴。だが患部が肺に近く病気につながる可能性があるため、説得されて断念した。はり治療もできず、自然治癒を待っているような状態。「痛み?

 (試合に)出ている以上はないですから」と気丈に話すが、持ち前の責任感がグラウンドへと突き動かしている。

 守護神が被弾しながらも、集中打での“うっちゃり勝利”。「全員野球だったね。みんなよくつないだ。エースで負けないというのが、数多くあればいいね」。しぶとさを見せてのハムらしい勝利に、梨田監督は笑顔をみせた。【本間翼】