<広島1-3楽天>◇22日◇広島

 広島が「エース対決」を落とした。ともに10勝でセ・パ両リーグのトップを張るルイスと楽天岩隈がマウンドで火花を散らしたが、11勝目を手にしたのは岩隈の方だった。体調不良を押して6回3失点と力投したルイスは責められない。むしろ、そのすごさを見せつける登板とも言えた。23日の試合が交流戦ラストゲーム。初の交流戦勝ち越しがかかる大一番だ。

 マウンドに立つルイスの表情はこわばっていた。流れる汗の量も普段より多く、顔面が紅潮しているように見えた。明らかな体調不良。楽天打線に挑む以前に、自分の肉体と激しいバトルをしていた。

 「それは関係ないよ。今日は制球力に苦しんだけど、イニングを重ねるごとに良くなっていった。最後の3回はいい投球ができたと思う」。言い訳めいたことは一切口にしない。エースのプライドがにじんだ。

 指を離れた瞬間に「失投」と分かる1球だった。2回2死一塁。左打席に7番横川を迎えたその初球。威力に欠ける144キロは石原のミットとは逆の内角高めに向かった。迷いなく振り抜かれ、打球は右翼席上段ではずんだ。

 「高めにいった球を本塁打されてしまった。(結果的に)1-3の試合。あの一発がなければ…」。悔やんでも悔やみ切れない。本来の調子なら多少の失投でもバットの芯を外す球威があるが、この日は制球、球威ともに足りなかった。

 3回には先頭に四球を与え、その走者を返された。適時打を放ったフェルナンデスを迎える前、ブラウン監督が1人でマウンドに歩いた。「ゆっくりと間を取って投げよう」。これもめずらしいこと。誰よりもマウンドでの制御能力に秀でた右腕が、やや冷静さを欠いていた。

 本人は反省するが、6回3失点だ。小林投手コーチも「こういう時もあるとしか言いようがない。6回3失点で責められる(素晴らしい)投手ですからね」と苦笑いした。どんな状況でも先発としての仕事を果たす。ルイスでなければ違った試合になっていた。

 白星なら交流戦無傷の6戦全勝。6勝は05年の西武西口に続く2人目だが、24試合制なら12球団で初めてだった。6連勝も過去にいない。歴史に挑戦したが、パ・リーグのエース岩隈、そして「体調不良」を敵に回しては分が悪かった。

 試合後、2人の高齢の外国人が一塁側ベンチに座り、グラウンドを見つめていた。ルイスの両親だ。来日して一度も息子の負けを見たことがなかったが、24日の帰国を前に初めて苦闘する姿に直面した。ルイスが2人を呼びに来た。その顔に笑顔はなかった。しかし、両親は柔和な笑みを浮かべていた。「まさか日本でここまで活躍できるとは」。異国の地で奮闘する息子が頼もしかった。

 チームメートの思いも同じ。ここまで頼り切ってきた助っ人。23日、交流戦の最終日を迎える。勝利で締めくくれば、ルイスの心の負担も軽くなる。【柏原誠】