<広島1-6巨人>◇29日◇広島

 敗れたが大きな収穫があった。首痛に苦しんだ広島高橋建投手(39)が、復帰登板で巨人打線を6回1失点に封じた。15日ぶりのマウンドだったが、空白を感じさせない老練な投球を披露。手薄な先発陣の再建に向けて明るいニュースとなった。同点の9回、完全無欠だった永川が5失点して敗れたが、アクシデントのようなもの。一歩後退した勝率5割&3位への挑戦へ、クヨクヨしていられない。

 ベンチ前で野手を迎える高橋の顔は精気に満ちあふれていた。好守の赤松とタッチを交わすと笑みがこぼれた。0-1の6回。2死一、二塁から阿部に打たれた打球は中堅後方へ。これを赤松が背走して好捕。この日最大のピンチはビッグプレーに救われた。

 「今日は守備に助けられました。最初も(前田智の)いい守備で乗せられたしね。久しぶりのマウンドだったけど1球1球、集中して投げることができた」。

 謙遜(けんそん)気味に振り返ったが、勝っていれば間違いなく殊勲者に値する内容だった。6回中、4回走者を背負う苦しい投球だったが、大崩れはしなかった。低めに変化球がよく決まり、長打を許さない安定感があった。この粘り強さは「復調」のキーワードになる。

 悶々(もんもん)とした2週間だった。2試合連続KOで迎えた14日の西武戦(西武ドーム)で首痛が悪化。1回1死満塁の最悪の場面でリリーフを仰いだ。踏ん張りどころの交流戦後半で離脱した責任を感じて「落ち込んだ」という。

 懸命にハートをコントロールした。「気持ちを切り替えることだけ考えてやってきた」。毎年のように発症するという首痛の治療に専念。はり治療やマッサージで痛みと周辺のコリを取り除いた。気持ちの面でも「せっかく(登録)抹消されたのだからリフレッシュしないと」と、前向きに復帰戦をにらんだ。

 ブルペン投球は2週間で1度だけ。決して万全とは言えなかったが「休養」の成果は出た。小林投手コーチも「離脱前の2、3試合は疲れが見えたが、今日はよく体が動いていた」と評価。さらに「これから、どうしても必要になる投手ですから」と高橋への期待を口にした。

 「心技体が少し上がってきたかな」。つぶやいた一言が再点火へのノロシになる。【柏原誠】